2020 Fiscal Year Research-status Report
量子ビーム実験・構造モデリング・トポロジカル解析の融合による非晶質材料の構造研究
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19K05648
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小野寺 陽平 京都大学, 複合原子力科学研究所, 助教 (20531031)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ガラス / アモルファス / 中性子回折 / X線回折 / 逆モンテカルロ / 分子動力学計算 / トポロジカル解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではガラス・アモルファスといった非晶質材料を対象とし、中性子および放射光X線といった量子ビーム実験データを利用したデータ駆動型モデリングに よって非晶質の3次元構造モデルを構築し、さらに先端数理学に基づいたトポロジカル解析を導入することより、非晶質材料に潜在する未知の秩序を抽出することを目的としている。 今年度は、SiO2ガラスと並んで典型的なガラス形成物質として分類されているP2O5ガラスについて、回折データに現れる特徴的なピークの起源を考察し、ガラス形成能に関連するトポロジーを抽出することを試みた。回折ピークの起源については、SiO2ガラスとは異なり、P2O5ガラスに特異的な2つに分かれたFSDPについて、P2O5ガラスの大きな特徴であるQ3構造ユニットの非架橋酸素、架橋酸素が関連する周期構造と関連づけることができた。トポロジーの抽出に関しては、逆モンテカルロ(RMC)モデリングによって構築した3次元構造モデルに対してパーシステントホモロジー解析(PH解析)を適用し、得られた2次元の散布図であるパーシステント図(PD)をP2O5組成を持った3つの結晶群と比較し、P2O5ガラスのPDにネットワーク形成物質特有のdeath軸に沿った縦長の分布を見出すとともに、ガラスの構造の中に複数の結晶のホモロジーが存在していることを明らかにした。 一方で、ガラス形成能が低い物質であるAl2O3について、電気化学的に合成したアモルファスAl2O3に関する構造研究も実施した。中性子回折と高エネルギーX線回折、NMRによる構造データを忠実に再現する構造モデルをRMCと分子動力学計算をハイブリッド化したシミュレーションによって構築し、その詳細な構造解析を行なった。 上記の2件の研究成果について現在、投稿の準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に実施した典型的な非晶質材料およびアルカリシリケートガラスに関する研究で培った解析技術をより複雑な構造を持った非晶質物質に適用し、新しい知見を得ることに成功している。論文化に時間がかかってしまっているが、概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は初年度に取り組んだアルカリシリケートガラスについて、より発展的・系統的な研究を実施する。シリカガラスに添加するアルカリイオンをLi-Na混合系、Li-Rb混合系へと発展させる。重要な点としては、Liに関連する構造を同位体置換中性子回折、Rbに関連する構造をX線異常散乱実験という元素選択的な測定によって実験的に明らかにすることを試みる点であり、混合アルカリ効果の中心となる各アルカリイオン周囲の構造を最先端の量子ビーム実験手法によって特異的に観測し、構造解析に盛り込んでいきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
コロナ禍による学会のオンライン開催に伴い、学会への出張の多くがキャンセルとなり、旅費が大きく減少したことが大きな原因である。今年度も新型コロナウィルスの影響により出張は大きく制限されることになると思われるが、生じた次年度使用額は昨年度の研究で得られた研究成果を論文としてまとめ、投稿する費用に充てたいと考えている。
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