2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of novel carbides anode for next-generation batteries with high-cost performance
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19K05651
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
喜多條 鮎子 山口大学, 大学研究推進機構, 准教授 (50446861)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Liイオン電池 / 負極材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
Liイオン二次電池は高いエネルギー密度の実現化可能なデバイスである反面、その安全性は確保されているとは言えないのが現実である。そのため、大型Liイオン二次電池用負極材料としては、グラファイトではなく、安全性を重視した材料としてLi4Ti5O12(LTO)負極が実用化されているが、レドックス電位が1.5 V vs. Li+/Liとグラファイトに比べて高く、実用量としても150 mA/g程度に留まっており、Liイオン二次電池の高いエネルギー密度という特徴を十分に生かすことができない。そのため、大きな可逆容量に加え、1.0 V付近の比較的高い作動電圧を有する次世代大型Liイオン二次電池用新規負極材料探索が必要不可欠となっている。これに対し、Fe3C負極は平均作動電圧が1.5 V vs Li+/Liであるものの、300 mAh/gの可逆容量を有する有望な負極材料であることを見出してきた。しかしながら、充放電反応機構は未だ解明されていない。今年度は、市販のFe3Cを用い、Liとの反応前後の結晶構造及び、電子状態の変化について検討を進めた。その結果、Fe3C負極の中に含まれている鉄の電子状態に加え、Fe3C結晶構造にはLiとの反応によってほとんど変化しないことが明らかとなった。この結果から、Fe3CはLiとの反応時に大きな体積変化がなく、Liイオン電池の負極として有望な材料となりうる可能性が見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の取り組みとしては、Fe3C負極のLi挿入脱離後のX線回折測定及び、X線吸収分析法を進め、充放電反応機構について検討を進めることとした。X線吸収分析測定を行った結果、初期のFe3CのFeのK吸収端のプロファイルは、金属鉄とよく似ており、ゼロ価の鉄として存在していることが明らかとなった。しかしながら、Liの挿入後のプロファイルにおいても変化しておらず、Feの電子状態はほとんど変化していない可能性が示された。今回の検討では、炭素の電子状態に関する測定は行っていないが、グラファイトへLiの挿入が可能であるように、金属結合しているFe-Fe結合中に存在している自由電子がLi挿入に寄与しているのではないかと推測している。さらに、充放電反応前後の結晶構造変化について検討を行っていくと、Fe3C結晶構造は維持したまま、Liの挿入脱離が進行していることが明らかとなった。しかしながら、一般的にLiがFe3C結晶構造内へ挿入した場合、Fe3Cの単位格子は大きくなる傾向がみられる。しかしながら、回折ピーク位置はほとんど変化しておらず、Fe3C結晶構造内のどの部分にLiが存在しているのかについては明らかにできていない。この点について明らかとするため、理論計算を用いたLi占有サイトの探索を進めている。この結果をベースに更なるFe3C負極の特性改善を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、Fe3CとLiの反応機構について検討を進めてきた。来年度は、これをさらに進め、Fe3C負極内でのLi占有サイトを明確にしていく。加えて、Fe3Cの合成方法の確立に向けて進めていく予定である。特に、Fe3Cの炭素コンポジット中の非晶質炭素内へ窒素原子のドープを行う事により、さらに負極特性が向上することが知られている。この窒素ドープを行うために、炭化材料として、分子内に窒素原子を有するキチンを利用することによるドープが可能であるのかについて検討を進めていく。この点については、窒素を含有していない有機物とのLi貯蔵能の比較を進め、実用化に向けたFe3C炭素コンポジットを進めていく予定である。特に、本研究ではメッキ液の再生を行う際に排出される塩化鉄をベースとした出発原料を想定しており、リサイクルにも直結させ、Fe3C負極の特性改善と低コスト化を同時に達成することを目指していく。
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