2019 Fiscal Year Research-status Report
ナノアモルファスコンポジット材料によるイオンセンシング
| Project/Area Number |
19K05659
|
|---|
| Research Institution | Doshisha University |
|---|
Principal Investigator |
盛満 正嗣 同志社大学, 理工学部, 教授 (00291526)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
| Keywords | イオンセンシング / 電気化学分析 / 酸化ルテニウムナノ粒子 / ハイブリッド材料 / リン酸水素イオン |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、医薬・環境・食品・農業などの幅広い分野で必要とされ、同時にこれまで実用化されたことのない電気化学手法によるリンの迅速・高感度・高精度な分析技術の開発を目指して、キーテクノロジーとなる高い触媒活性と選択性を持つ新たなリン酸水素イオン検出用触媒の組成・構造および機能の解明を目的とした。具体的にはアモルファス相中にナノ粒子を分散したナノアモルファスコンポジット材料の合成とそのセンシング特性を明らかにする。今年度は、酸化ルテニウムナノ粒子からなる触媒およびこれを含有するナノアモルファスコンポジット材料を合成し、なぜこのコンポジット材料においてリン酸水素イオンの酸化が起こるのかというメカニズムを中心に研究を進めた。その結果、種々の電気化学測定方法によるリン酸水素イオンの酸化反応の解析から、反応電子数、反応の不可逆性を明らかにし、酸化で生じる反応生成物の予測するとともに、速度論的な手法で反応のメカニズムを明らかにした。また、ナノアモルファスコンポジット材料の合成条件を種々検討し、粒径が異なる酸化ルテニウムナノ粒子を含むコンポジット材料と、粒径が異なる酸化ルテニウムナノ粒子単独の材料を合成することに成功し、これら粒径の異なる材料の幾何学的反応表面積、電気化学的充電電気量、リン酸水素イオン濃度に対する酸化電流密度とそれから得られる感度を比較した結果、検出感度は酸化ルテニウムナノ粒子径に応じた反応表面積とほぼ比例することを明らかにした。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、幅広い分野で重要かつ必要であるリンの定量法が、モリブデンブルー法と呼ばれる分光分析法のみであることをきっかけとして、なぜイオンセンシングによるリンの定量が実現していないのかを学術的な「問い」とした。すなわち、リンはリン酸イオンやリン酸水素イオンのほか複数のイオン形態をとることが知られているが、いずれについても迅速かつ選択的にイオン応答を示す有効なイオンセンシング材料は見出されていなかった。そこで、今年度は、過去の知見で得られていた酸化ルテニウム－酸化タンタルコンポジット材料でのリン酸水素イオンの酸化について、なぜそれが生じるのか、またどのような酸化反応であるかや、その酸化反応の感度は何に依存するかといった課題を明らかにすることを計画した。これらの課題に対して「研究実績の概要」に記した結果が得られたことから、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
|
| Strategy for Future Research Activity |
当初計画の通り、第２年度は酸化ルテニウム－酸化タンタルコンポジット材料の最適化について研究を進める。最適化は３つの指標で検討する。第１は検出感度であり、これはリン酸水素イオン濃度に対する酸化電流のプロットを作成し、そのプロットが直線となる領域での傾きで求められる。検出感度は、微小な濃度変化に対して大きな酸化電流の変化を生じるほどより高感度である。第２の指標は上記の直線領域における濃度範囲の広さ（定量濃度範囲）である。この濃度範囲が広いほど、濃度によって感度が変わらないことを意味するため望ましい。第３は定量に用いることができる安定した酸化電流が得られるまでの時間（検出時間）である。これが短いほど迅速な検出が可能となる。これらの３項目に対して、コンポジット材料の最適化を図る。
|
| Causes of Carryover |
研究の進捗が順調であり、合成する触媒に必要な試薬について、当初予定した量よりも少ない量であったこと、触媒合成に必要な試薬の一つである貴金属塩が他の試薬に比べて高く、常に時価での購入となるが、この試薬が当初想定した金額よりも安かったことなどが理由である。次年度はこれらの試薬量が増えるとともに、触媒を評価する際に必要な金属基板の量も増えることから、これらに対して使用することを予定している。なお、触媒合成に必要な試薬が高騰した場合は今年度とは逆に研究費が不足することもある。
|
