2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K05667
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
桑村 直人 大阪大学, 理学研究科, 助教 (80643791)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 電気化学 / 含硫アミノ酸 / 異種金属イオン / 配位ポリマー / キュバン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、金属錯体を用いた高効率な水の完全分解系の構築を目指し、これまでに開発した酸化触媒能をもつ金属錯体と還元触媒能をもつ金属錯体を混合して、金属イオンによる連結と複合化を検討した。 3年度は、酸化触媒としてはたらく銅(II)錯体の複合化を検討した。ペニシラミンをもつ銅(II)錯体を他の金属イオンと複合化すると、青色のブロック状結晶が得られた。単結晶X線構造解析の結果、この結晶は、ペニシラミンが酸化されて生じたペニシラミンジスルフィドを配位子とした銅(II)の異種金属7核錯体であった。金属イオンはそれぞれ水酸化物イオンによる架橋で連結されており、分子構造は異種金属を中心としたコーナーシェア型のダブルキュバン構造であった。ダブルキュバンの末端は、ハロゲン化物イオンでキャップされている。銅(II)イオンと異種金属イオンの組成比は、元素分析、蛍光X線分析、単結晶X線構造解析、磁化率測定によって、6:1と決定した。ダブルキュバン構造は極めて珍しい構造モチーフであるが、異種金属イオンを配置した銅(II)ダブルキュバン構造の例は他にはない。この結晶は水に溶けない。そこで、この結晶を電極に担持し、塩基性水溶液中で、電気化学挙動を調べた。すると、酸化掃引によって急激な電流上昇が確認された。この電流上昇は結晶を担持していないと現れない。電流の上昇と同時に結晶近傍に泡が生じ、これをガスクロマトグラフで分析したところ、酸素ガスを生じしていることが分かった。すなわち、得られた結晶は水の酸化を電気化学的に触媒することが明らかになった。さらに、その活性と安定性は、用いる異種金属イオンによって異なることも明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年度は、銅(II)錯体の複合化を検討した。当初予測していた、銅(II)錯体の高分子化は起きず、別の配位化合物が得られた。その点は、今後、合成条件の再検討が必要である。一方で得られた配位化合物は、極めて珍しいダブルキュバン型の異種金属配位化合物であった。今年度はその合成手法を確立することができ、さらには、水酸化触媒機能を見出した。そのため、研究は順調に進んでいるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
複合化において銅(II)錯体の酸化的な分解反応が進むことが明らかになった。当初目標を考え、合成条件の再検討を行う。一方で、予期せぬダブルキュバン型配位化合物の単離に成功した。キュバン構造は生体系においても多電子移動触媒に極めて重要な構造モチーフであり、今後、この系のさらなる発展を検討したい。またパラジウム(II)や銅(II)以外の金属イオンを用いた錯体群の触媒活性の調査を検討していく。
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Causes of Carryover |
(理由) 当初予定していた遠心分離機の購入を別の予算で補填できることになり、物品費への支出が抑えられた。 (使用計画) 純水製造装置や恒温槽などいくつかの物品の老朽化を懸念している。これらは錯体の合成に必須であり、故障を生じれば修理するほかない。そのほか、分析用の電極やイオン交換膜など、高額な消耗品の更新が必要であり、本予算を充当したいと考えている。
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