2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K05668
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
増井 敏行 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (00304006)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 遮熱顔料 / 無機顔料 / 黒色 / マンガン / 複合酸化物 / 配位子場理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
遮熱顔料とは,赤外領域の光の反射特性を利用した蓄熱防止を目的とする機能性顔料のことであり,遮熱塗料の効果は,色相が白色に近いほど高く,黒色に近いものほど低くなる.既存の黒色遮熱無機顔料としては,Fe2TiO4や(Fe,Cr)2O3などが知られているが,Fe2TiO4は遮熱性能が不十分であり,(Fe,Cr)2O3は有害な元素であるクロムを含んでいることが課題となっている.従って,黒色を呈しながらも近赤外領域の光を効率よく反射することのできる遮熱特性を持った新規顔料の開発が求められている.そこで本研究では,可視光線を吸収して黒色を呈するにもかかわらず、近赤外線を高反射して、温度上昇を抑制する新しい黒色遮熱顔料の開発を目指した. 令和元年度は,Ca2MnO4およびCa2Mn0.85Ti0.15O4複合酸化物のカルシウムサイトに,他のアルカリ土類金属や希土類イオンを5 mol%固溶させた試料,あるいはマンガンサイトに鉄や銅,あるいは亜鉛イオンを5 mol%固溶させた試料を合成し,黒色を呈し,赤外光を効率よく反射するような固溶元素を探索した.その結果,亜鉛イオンを固溶させたときに近赤外光の反射率が向上することがわかった.さらに,Ca2Mn0.80Ti0.15Zn0.05O3.95において試料の明度が最も小さくなり,鮮やかな黒色を呈することを見いだした.そして,これらはZn2+イオンの固溶により結晶中のMnO6八面体が歪んだ結果,Mn4+のd-d遷移の禁制が緩和されて可視光の吸収が増大するためであることを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規な黒色遮熱顔料として,Ca2Mn0.80Ti0.15Zn0.05O3.95が有望であることを見いだした.この材料はMn4+のd-d遷移により可視光領域の光を吸収し,黒色に着色するが,結晶中にあるMnO6八面体の歪みが大きくなるほど黒色度が増す.今後,組成を最適化することによって,高い黒色度と遮熱特性の両立が期待されるため.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り,遮熱特性と黒色の発色が共に最大となるように,顔料の組成を最適化する.最適化された黒色遮熱顔料の紫外可視近赤外分光反射率,日射反射率,色座標,粒子径,粒子形状,比表面積,細孔分布等の基礎物性について,現在実用化されているチタン酸鉄(Fe2TiO4)、鉄-クロム系複合酸化物((Fe1-xCrx)2O3,いわゆるピグメントブラウン29),マンガン-ビスマス複合酸化物(BiMn2O4)などとの比較検討を行う.
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