2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K05668
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
増井 敏行 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (00304006)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 遮熱顔料 / 無機顔料 / 黒色 / セリウム / バナジウム / 複合酸化物 |
Outline of Annual Research Achievements |
遮熱顔料とは,赤外領域の光の反射特性を利用した蓄熱防止を目的とする機能性顔料のことである.一般に,遮熱効果は色相が白色に近いほど高く,黒色に近いものほど低くなる.既存の黒色遮熱無機顔料としては,Fe2TiO4や(Fe,Cr)2O3などが知られているが,Fe2TiO4は遮熱性能が不十分であり,(Fe,Cr)2O3は有害な元素であるクロムを含んでいることが課題となっている.従って,黒色を呈しながらも近赤外領域の光を効率よく反射することのできる遮熱特性を持った新規顔料の開発が求められている.そこで本研究では,可視光線を吸収して黒色を呈するにもかかわらず,近赤外線を高反射して,温度上昇を抑制する新しい黒色遮熱顔料の開発を目指した. 令和2年度は,遮熱顔料の母体としてLi2MnO4,CaZrO3, 及びCeVO4に着目した.これらの化合物やこれらに他元素をドープした各種固溶体を合成し,得られた試料の色彩を評価した.これらの化合物のなかで,CeVO4はCe4f-V3d軌道間の電荷移動遷移により,波長690 nmより短波長の光を吸収し暗褐色を呈することがわかった.さらに,CeVO4の色をより黒色に近づけることを目指し,Ce3+サイトを種々の希土類金属イオンで部分置換したCe0.90RE0.10VO4(RE3+ = Y3+, La3+, Pr3+, Nd3+, Sm3+, Eu3+, Gd3+, Tb3+, Dy3+, Ho3+, Er3+ , Tm 3+, Yb3+, Lu3+)を合成した.得られた試料の色度座標と遮熱特性(日射反射率)を評価した結果,Ce0.90Gd0.10VO4において近赤外光の反射率を保ちながらも純粋な黒色に近づくことを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規な黒色遮熱顔料として,CeVO4が有望であることを見いだした.この材料はCe4f-V3d軌道間の電荷移動遷移により,波長690 nmより短波長の光を吸収し暗褐色を呈するが,Gd3+を固溶させることで黒色度が増すことを見いだした.今後,組成や粒径などを最適化することによって,高い黒色度と遮熱特性の両立が期待できる.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り,遮熱特性と黒色の発色が共に最大となるように,顔料の組成を最適化する.最適化された黒色遮熱顔料の紫外可視近赤外分光反射率,日射反射率,色座標,粒子径,粒子形状,比表面積,細孔分布等の基礎物性について,現在実用化されているチタン酸鉄(Fe2TiO4)、鉄-クロム系複合酸化物((Fe1-xCrx)2O3,いわゆるピグメントブラウン29),マンガン-ビスマス複合酸化物(BiMn2O4)などとの比較検討を行う.
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染階第防止のために学会がすべてオンライン開催になり,旅費が全くかからなかったことから次年度使用額が生じた.今年度も雲行きは不透明だが,オンライン開催となった場合は物品費に流用して研究を推進する.
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