2019 Fiscal Year Research-status Report
Developement of photocatalyst working under visible light based on the elucidation of the photocatalytic properties to the overall H2O splitting
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19K05669
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
酒多 喜久 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (40211263)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 光触媒 / 水分解反応 / 高活性 / 金属イオンドープ / チタン酸ストロンチウム / チタン酸バリウム / 助触媒 / 表面状態制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
太陽光を利用してH2O分解反応を実用化レベルの高活性を示す光触媒の開発とその機能解明を目的として、Tiを含有する混合酸化物光触媒によるH2O分解反応に対する光触媒活性の高活性化とその要因の解明を検討した。先ず、有効なH2生成反応(HER)の助触媒であるRhyCr2-yO3を担持したSrTiO3光触媒について、SrTiO3にNaイオンをドープすると光触媒活性が飛躍的に向上する。その光触媒活性は調製法に基づく光触媒の状態には依存せず、原料の純度が大きく影響すること、および、光触媒活性向上の前提条件であるドープしたNaイオンがSrTiO3のSrイオンと構造を保ちながら交換することで格子欠陥を生じ、光生成した電子と正孔の再結合を抑制することを解明した。最適条件で調製したNa-SrTiO3によるH2O分解反応の見かけの量子収率(AQY)は28%(波長365 nm)であった。次に、BaTi4O9光触媒についてH2O分解反応に対して光触媒活性の向上を検討した。Na-SrTiO3光触媒と同様に助触媒にRhyCr2-yO3を用いた場合、この光触媒反応に対して非常に高い活性を示すが、同時に進行する助触媒の酸化劣化が原因で時間経過とともに失活した。そこで、助触媒の酸化劣化を抑制するためにO2生成反応(OER)助触媒であるCoOxを共担持したところ、失活は無くなり、定常的なH2とO2の生成が観測された。最適条件で調製した光触媒はH2O 分解反応に対して見かけの量子収率が41%(波長:313 nm)を示し、30時間以上定常的に反応の進行を確認した。これらの結果より、酸化物光触媒のH2O分解反応に対する高活性化の要因は、光触媒のバルクの制御による光照射で生成した電子と正孔の再結合を抑制と、HER、OERに有効に作用できる助触媒担持による表面での化学反応過程を制御することであることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
光触媒によるH2O 分解反応に対する高活性化要因の解明については、金属イオンドープSrTiO3についてNaイオンをドーパントとして検討し、NaイオンをドープすることでSrTiO3のH2O 分解反応に対する光触媒活性が高活性化する要件とそのメカニズムを解明した。さらに、更に、独特な結晶構造を持ち光照射で生成した電子と正孔の分離が促進されるBaTi4O9光触媒において、通常は劣化の進行が比較的遅いH2O分解反応に対して非常に有効に作用できる水素生成反応(HER)助触媒であるRhyCr2-yO3の劣化が著しく、その原因が酸化劣化であることを明らかにし、H2Oの酸化側の制御において酸素生成反応(OER)の助触媒であるCoOxをさらに担持することにより、光触媒活性のみならずH2O分解反応に対する寿命も著しく改善されることを見出した。このことから、近紫外光に応答してH2O分解反応を進行させることができるTi混合酸化物光触媒のこの反応に対する高活性化の要因を明らかとした。これらの知見は本研究の基礎となる重要な知見であり、今後の研究を進めるうえでの大きな進歩となりえる。さらに、本研究の全般的な計画からは、予定を大幅に超えた進捗である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は2019年度の成果に基づいて、次に挙げる項目について検討していく予定である。 ・調製法制御による有効な光触媒表面反応場形成に基づくH2O 分解反応の高活性化:金属イオンドープSrTiO3について更なる光触媒特性の向上を目指し、反応場である表面で助触媒の析出を制御できる金属イオンドープSrTiO3光触媒の微粒子単結晶をフラックス法で調製して、光触媒によるH2O分解反応活性に対する助触媒の担持の影響を詳細に検討する。さらに、H2、O2生成助触媒について、それらの有効な担持法・担持条件および、新たにH2O分解反応に有効に作用できるH2生成反応、O2生成反応用の助触媒の開発の検討を行う。 ・H2O分解反応に実用化レベルの光触媒活性を示す酸化物光触媒の開発;2019年度得られた成果である光触媒によるバルク状態の制御と助触媒による表面反応場の制御による光触媒のH2O分解反応に対する高活性化要因を他のTiやNbを含有する混合酸化物光触媒に応用して、この反応に対して高活性化を検討して高活性化要因が一般的に他の光触媒でも成立するか確認し、さらに近紫外光照射下でH2O分解反応に実用化レベルの高活性を示す光触媒の開発を行う。 ・H2O分解反応に有効に作用できる酸化物光触媒の長波長応答化の検討;H2O 分解反応に対して高活性化が可能な酸化物光触媒の応答波長範囲を広げることを目的として、高活性化ができる酸化物光触媒に関連した物質に関した化合物半導体を合成し、その光触媒特性を検討する。特に、原料に窒化物や硫化物を使用して、酸窒化物、酸硫化物を合成して、それらの光触媒特性をH2O 分解反応のテスト反応である犠牲剤水溶液を用いた光触媒反応で評価する。
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