2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of hydrogen separation reformer using Ni-proton conducting oxides
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19K05670
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
板垣 吉晃 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (30325146)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 水素分離膜 / セラミック / 水素エネルギー / オンサイト水素製造 / 両極性伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、プロトン-電子混合導電体における金属およびセラミック粒子の粒径制御を行うことで、高い電気伝導性と触媒活性を両立したセラミック水素透過膜の開発のための基礎的知見を得た。プロトン-電子混合導電体であるNi-BaCe0.8Y0.2O3 (Ni-BCY)について、緻密化のために1500oCの高温焼成を行うと、Niの著しい粒成長が起こり、伝導性が低下することがこれまでの研究で分かっている。これを解決するため、セラミック相であるBCYに等重量のGa0.1Ce0.9O2-x(GDC)を添加することによりNiとBCYの粒成長を効果的に抑制でき、GDC無添加の場合に比べて粒径が約1/2に減少することを見出した。これに伴い、Niによる電子伝導性が向上し、40wt%Ni-BCY-GDCは60wt%Ni-BCYと同等の高い伝導度(>10^3 Scm^-1)を示した。この結果は、水素分離膜でのNiの添加量を低減することができ、Ni再酸化による膜の破損を抑制できることを示唆するものである。さらに、Niの粒径は、マトリックスであるBCY-GDCの粒径と体積分率に対して直線的に変化することが分かった。この結果より、Zener式から予想されるようにNi粒子がマトリックス粒子のピン留め効果により粒成長抑制効果を受けていることが判明した。GDCの添加量が及ぼすNi粒径への影響についても調査を行った。その結果、重量比でBCY:GDC=5:1程度でBCY:GDC=1:1とほぼ同等のNi粒成長抑制効果が現れることを見出した。したがって、次年度はGDCの添加量と電子伝導、プロトン伝導の関係を明らかにし、構造最適化を行っっていく予定である。 2019年度は本件に関して、学術論文1報と学会発表2件を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,オンサイトで水素キャリヤーからの燃料改質と水素分離を一体で行うことができる水素分離型リフォーマーの開発を最終目的としている。2019年度は,Ni金属を添加したプロトン導電性酸化物からなるNi-サーメットを作製し、高温での膜焼結後のNi粒径に及ぼすNi添加量の影響と,酸化物相であるBCYとGDCの化学組成比の影響を調べることを目標とした。目標達成のため、Ni-BCYとNi-BCY-GDCについて種々の組成比を持つ資料を作製し、それぞれについてNi粒径の評価をt行うことができた。本実験により、高温焼結条件においてもNi粒成長を効果的に抑制し、Ni粒径を3マイクロメートル程度に維持する条件を見出すことができた。Niの微粒子化を達成したことにより、40wt%の低Ni含有試料においても高い電子伝導度を発現することを見出した。したがって、Ni-BCY-GDCの3成分からなるNi-サーメット膜は水素分離膜として有望であることがわかった。2019年度の研究成果により、1)高い電気伝導性と触媒活性、2)Ni含有量の低減による再酸化時の安定性、を兼ね備えた水素分離膜の開発条件を明らかにすることができた。さらに、1件の学術論文発表と3件の学会発表を行うことができた。以上の点より、2019年度は当初の計画通り、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究成果により、Ni-BCY-GDC(NBG)が水素分離膜として有望であることを明らかにすることができた。これまで、GDCの微量添加においてもNi粒成長を有意に抑制でき、さらにNi導電率が増大することを見出している。 今後は、これらの組成と水素透過量との関連性を明らかにしていくことで、実用化への可能性について検討を進めていく予定である。NBGにおける水素透過には、プロトンと電子が同時に移動する両極性伝導による寄与と、Ni金属相内を水素原子が拡散する2つの経路が考えられることから、NBGにおける金属相とセラミックス相の体積分率比、プロトン伝導セラミックス材料のプロトン伝導率と水素透過量の関係について調査する。これにより、プロトン透過に及ぼす構造的な因子について定量的な分析を行う。最終的には、水素透過に最適な組成を導き出すことを目標とする。さらに、水素透過量の向上を目指した、NBG膜の薄膜化を試みる。薄膜化には多孔質金属支持体を用い、その表面にミクロンオーダーの厚さを持つNBG膜を形成する。薄膜形成には、例えばNBG微粒子の懸濁液を用いた電気泳動堆積法などを試みる予定である。 以上、最終年度である2021年度までにNGBの組成の最適化と薄膜化を達成し、金属支持型水素分離膜の実用化に向けた指針を得ることを目指す。
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