2019 Fiscal Year Research-status Report
電子-イオン混合伝導性ポリ硫化炭素ナノシートの創出と全固体電池用正極材への応用
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19K05678
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
金澤 昭彦 東京都市大学, 工学部, 教授 (80272714)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | リチウムイオン二次電池 / 全固体電池 / 二硫化炭素 / ポリ硫化炭素 / 導電性レドックス / 電子-イオン混合伝導性 / 硫黄正極材 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、汎用有機溶媒である二硫化炭素から誘導される炭素と硫黄が1:1の化学量論的組成からなるポリ硫化炭素を基幹材料として、それらの合成検討と物性評価をとおして硫黄(電池活物質)、カーボン(導電助剤)、Liイオン伝導体(固体電解質)などの複数の役割を併せもつ電子-イオン混合伝導性ポリ硫化炭素を創出し、全固体電池用正極材としての潜在性能を検証することを目的とする。 ポリ硫化炭素の高効率合成を目指して、二電極法による電気化学的合成法について検討した結果、二硫化炭素からポリ硫化炭素の直接合成が可能であることが明らかとなった。得られた生成物の分光学的測定(IR測定、XPS測定、Raman測定)を行った結果、π共役構造(拡張π電子共役系)とジスルフィド結合を有していることが確認できた。また、反応条件を調節することによって、二硫化炭素の電解還元重合によって還元状態の自己ドープ型のπ共役ポリ硫化炭素を得ることが可能であることがわかった。その際、支持電解質の有機カチオンが対イオン(ドーパント)として共存する。 ポリ硫化炭素の二次電池用正極活物質への応用を考えた場合、最大の特徴は電子伝導性を有することである。本研究で得られた種々のポリ硫化炭素において、それらを加圧造粒処理した圧粉成形体を用いて四探針法により電気伝導性を測定した。その結果、電解重合ポリ硫化炭素は電気伝導性を示すことが実証された。観察された電導度は、分子量やそれに関連するポリ硫化炭素の凝集構造や高次構造、ドープ率に影響され10-6~10-4 S/cmの値であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、ポリ硫化炭素の合成法の検討、基礎物性の評価を行った結果、ポリ硫化炭素の高効率合成を可能にする二硫化炭素の二電極電解重合法の有効性を確認するとともに、電子伝導性を示す自己ドープ型ポリ硫化炭素を得るための反応制御が可能となった。以上の成果により、ポリ硫化炭素が元来もつ硫黄(電池活物質)とカーボン(導電助剤)の性質に加えて、Liイオン伝導体(固体電解質)の性質も併せもつ高機能性・多重機能性の二次電池用硫黄正極材に向けた基礎研究を計画どおり完遂することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の研究計画を実施項目の順に以下に記す。 ポリ硫化炭素の高効率合成法の確立: 二硫化炭素の電解還元重合によるLiイオン自己ドープ型ポリ硫化炭素の合成法の確立を目指す。特に、ドープ率に影響を及ぼす反応因子について調べ、ポリ硫化炭素の電気的性質の自在制御について検討する。 ポリ硫化炭素合成における反応条件とキャラクタリゼーションとの相関性: 今年度において、二硫化炭素の二電極電解重合によって自己ドープ型ポリ硫化炭素が得られることが明らかとなった。次年度は、ポリ硫化炭素の高純度化を図るとともに、ポリ硫化炭素の酸化・還元状態に基づくp型導電性ポリマーとn型導電性ポリマーの同定を試み、その結果をポリ硫化炭素の電池反応機構の解明および正極電気容量の向上に関する検討に利用する。 ポリ硫化炭素の基礎物性評価: Liイオン自己ドープ型ポリ硫化炭素がLiイオン伝導性を示すことを実証し、電子伝導性に加えてイオン伝導性をも示す電子-イオン混合伝導性ポリ硫化炭素の実現を目指す。 全固体電池の試作: ポリ硫化炭素が正極活物質や導電助剤に加え固体電解質としての役割をも担うことが可能であることを確認し、それらの全固体電池用正極材への適用に関する予備検討を行う。
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Causes of Carryover |
本年度の直接経費1,500,000円の内、59,149円を次年度に使用することとした。これは、物品費(消耗品費)として予定していた化合物合成に使用する電解重合用電極の購入を一部次年度に先送りしたことに起因する。繰り越し分は、次年度に当該物品の購入に使用する予定である。
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Remarks |
1)次世代電池シリーズ(8)Li-S電池の動向~市場編~、Yano E plus(矢野経済研究所)、2019年7月15日(雑誌記事) 2)次世代電池シリーズ(8)Li-S電池の動向~市場編2(プレーヤー編)~、Yano E plus(矢野経済研究所)、2019年9月15日(雑誌記事) 3)電池デバイス応用に向けた導電性ポリマーの電解合成、技術情報協会、2020年3月10日(招待講演)
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Research Products
(8 results)