2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of ultra-high resolution electrochemical bioimaging method to elucidate intercellular communication
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19K05687
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
井上 久美 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (20597249)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | バイオイメージング / バイポーラ電気化学 / 化学顕微鏡 / 電極アレイ / 電気化学センサ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、生命システムの解明ツールとして利用可能な動的化学イメージング技術を実現することを目的とし、高速かつ高解像度の新しい電気化学イメージング法の確立に挑戦している。そのための方法として、クローズドバイポーラ電極アレイを用いて、従来の電極アレイ型電気化学イメージングで高解像度化を妨げている「配線問題」と「測定装置のチャネル数限界の問題」を同時に解決する。このイメージング法が確立すれば、ラベルフリーに直接的かつリアリタイムに1細胞レベルの局所領域の化学情報を可視化することができるようになり、細胞間の化学反応ネットワーク解明などが可能な新たな顕微鏡システムを提供できる。 前年度までに8 µmの検出素子を平均ピッチ40 µmのランダム配置で高密度化できたことから、さらなる高密度化と配列化を進めた。 また、各クローズドバイポーラ電極の両極間にわずかに生じてしまうイオン導通を解消し、各ピクセルから均一なシグナルを得るための手法を開発した。 さらに、光の回折限界を超える高解像度化に向けた取り組みとして、ファイバー電極を利用する拡大イメージングの原理検証を行った。 バイオイメージングへの応用は、ルテニウム-酸化型グルタチオンをルミノフォアとするカソーディック電気化学発光(ECL)を利用するドーパミン定量について、詳細に解析した。その結果、大きなバックグランドシグナルが生じる原因を解明し、これを改善するために、新たなルミノフォア導入の検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
バイポーラ電極アレイの高密度化を進め、10 µmの解像度を達成した。さらに、ドーパミンイメージングのための計測システムの検討が大きく進展した。具体的な進捗状況は以下の通り。 ①高密度バイポーラ電極アレイの作製方法の検討:アレイの作製基板として、主にキャピラリープレート(8 µm直径、10 µmピッチ)の検討を進めた。昨年度まで実施していた金酸の無電解還元法では、原理的にイオン導通を完全に防ぐことができないため、カーボンペーストを詰める方法を検討した。当初、一般的な導電性カーボンペーストではカーボン粒が大きすぎる問題や、熱で溶剤を気化させて硬化させるとイオン絡となってしまう問題が判明したが、ナノカーボンブラックをパラフィンに分散させる方法で解決できることが分かった。しかし、パラフィンが測定中にわずかながら溶出する問題があり、現在、熱架橋型など別の分散剤を検討している。 ②計測システムの開発:ドーパミンを計測するためのシステムとして、昨年度利用の可能性が分かったルテニウム-酸化型グルタチオンによるカソーディックECLと組み合わせる方法の詳細検討を行った。その結果、より貴な電位でECL発光するルミノフォアを使うとよいことが分かり、別のルミノフォアの検討を進めている。 ③デモンストレーション:ルテニウム-酸化型グルタチオンの系で、シャープペンシルの芯をcBPEアレイに用いて、ドーパミンをイメージングできることを示した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終目標である生命システムの解明ツールとして利用可能な動的化学イメージング技術の実現に向けて、今年度引き続き、バイポーラ電極アレイの高密度化、ターゲットとする現象を高速かつ高解像度に再現性良く捉えられる計測システムの開発および生命現象のイメージングのデモンストレーションを実施する。バイポーラ電極アレイの高密度化は、キャピラリープレートを用いる方法で、ナノカーボンブラックペーストの詰め方の検討を進める。また、酵素や電子伝達メディエーターをカーボンペーストに混ぜ込むことにより、過酸化水素検出用の触媒電極として機能させることも引き続き検討する。計測システムはドーパミン検出用ルミノフォアの検討をさらに進めるとともに、蛍光イメージングなどと組み合わせる方法についても検討する。カーボンファイバー電極の利用は、細くファイバーを引いても電気的導通を保てる方法を主に検討し、再現性の良い素子にしてゆく。生命現象のイメージングのデモンストレーションは、現在、神経様細胞であるPC12細胞の培養を開始しており、PC12細胞からのドーパミン放出のイメージングをデモンストレーションができることを目指す。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により学会や打ち合わせがウェブ開催となり、学会参加費および旅費の執行が不要となったこと、および試薬や器具を予定より安価に入手できたため、次年度使用額が生じた。2021年度はこの研究費を生化学試薬を含む各種試薬や電極材料、顕微鏡部品などの購入および試作のための共同実験施設使用料、論文投稿費で使用し、研究を加速させて成果を広く社会に提供する。
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Research Products
(14 results)