2020 Fiscal Year Research-status Report
E型肝炎ウイルスにおいて宿主細胞への侵入に関わる部分配列の合成的研究
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19K05689
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
奥 浩之 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (20301749)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ペプチド抗原 / E型肝炎 / エピトープ / イノシシ / 太田市 / 群馬県 / 検査キット / 抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、我が国では2010年頃からHEV(E型肝炎ウイルス)によるE型肝炎の患者報告数が急増している。我々は太田市八王子丘陵と金山丘陵に生息するニホンイノシシのHEV感染状況調査を目的として、ウイルス蛋白から設計したペプチド配列とイノシシ血清の反応性について検討を行っている。2020年度はHEV蛋白について (a) 2019年度のORF2AとORF2Bに加えて3つ目のORF2Cペプチドを設計・合成、(b) 比較用にPEDV(豚流行性下痢ウイルス) nucleocapsid proteinから設計した合成ペプチド(NCP01)を合成、(c)微粒子によるペプチドの化学修飾、(d)2019年度の24検体から増やして96検体のイノシシ血清を用いてラテックス凝集試験 を行った。血清の検体数を増やすことで、3種類ORF2A, ORF2B, ORF2Cのペプチド鎖はイノシシ血清と反応することが明らかとなった。例えばORF2A 配列では特に大きなtiter値として4096倍、2048倍、1024倍と高い反応性を示す血清試料が各1検体ずつみられた。さらに捕獲地、捕獲月、体重と抗体価の関係を検討したが、明瞭な相関は見られなかった。今後研究を進めて行くことで、世界中に蔓延しているE型肝炎の予防ペプチドワクチンおよび感染履歴を測定するための簡易検査キットの開発に有用なデータが得られると期待される。本研究で用いたイノシシ血清は太田市農政部農業政策課有害鳥獣対策係,群馬県猟友会(太田・藪塚・新田の各支部),太田市各自治会,の関係方々の度重なるご協力により採取されたものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
試験するイノシシ血清を96検体に増やしたこと、HEV ORF2蛋白から設計した合成ペプチドを3種類(ORF2A, ORF2B, ORF2C)に増やしたこと、さらに比較用にPEDV(豚流行性下痢ウイルス) nucleocapsid proteinから設計した合成ペプチド(NCP01)を用いることで、新しい知見が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の最終年度であり、今後はELSA法による抗体価測定とどの程度相関が見られるのか?適切なcut-off値について検討を行う。さらにORF3蛋白から設計した短鎖ペプチドについては血清との反応性が見られなかった。この原因についても免疫回避によるのか?ペプチド配列の選択に原因があるのか?引き続き研究を進めてゆく。
また、2021年12月~2022年3月に国立ダッカ大学薬学部のChowdhury教授が群馬大学に滞在することで共同研究を行う。本研究の微粒子による抗体価検査キットは特殊な測定装置やコールドチェーンを必要としないため、バングラデシュ国内での人々の健康(SDGs目標3 ターゲット3.b)や生物多様性・生態系の保全と持続可能な農業活動(SDGs目標15 ターゲット15.8)に寄与できることから、我が国の技術供与によるプレゼンスを強化向上することが期待される。
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Research Products
(10 results)