2019 Fiscal Year Research-status Report
膝関節再生を志向した間葉系幹細胞の分化制御と移植用組織の構築
Project/Area Number |
19K05690
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
飯島 一智 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (30468508)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 細胞足場 / 間葉系幹細胞 / 変形性膝関節症 / ハイドロゲル / マイクロ流体技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、細胞足場ハイドロゲルの種々の機能化と工学的手法を組み合わせることにより、間葉系幹細胞の分化を制御し、軟骨-軟骨下骨連続組織や靭帯・腱のような配向性組織など、種々の移植用の運動組織を構築する手法を開発する。初年度にあたる本年度はまず、力学特性の異なるゲル型細胞足場の作製と足場の弾性率がヒト骨髄由来間葉系幹細胞の分化へ与える影響の解析を行った。ゲル内へ細胞を播種して骨分化誘導培地で培養後、リアルタイムPCRを用いて各種骨分化マーカー遺伝子の発現を解析した。高弾性ゲルにおいて培養した間葉系幹細胞では前期および後期の骨分化マーカーいずれの発現も低弾性ゲル中で培養したものと比較して顕著に高くなっており、高弾性率ゲルにおいて間葉系幹細胞からの骨分化が顕著に促進されていることがわかった。また、セルカルチャーインサートを用いて組成の異なるゲルを連続的に作製する手法も確立した。本手法を利用して弾性率に勾配を有するゲルを作製することで、変形性膝関節症への移植に適用可能な軟骨-軟骨下骨連続組織の構築が可能になると見込まれる。 また、靭帯・腱のような配向性組織の構築を目指し、マイクロ流体デバイスを用いたゲルファイバーの作製について検討を開始した。デバイスで形成される同軸二層流間でのゲル化反応を利用した本手法では速やかなゲル化が必須であり、共有結合形成を駆動力とするゲルの適用は困難であることがわかった。そこで、共有結合形成とポリカチオン-ポリアニオン間でのポリイオンコンプレックス形成を組み合わせた、より短時間で形成されるゲルに着想し、バルクにおけるゲル化挙動について評価を行ったところ、速やかにゲル化することが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゲルの力学特性が間葉系幹細胞の分化に与える影響の解析およびその制御について順調に解析が進んでいるとともに、連続組織の形成にも道筋がつきつつある。また、マイクロ流体デバイスを用いたゲルファイバーの作製については技術的課題が生じたものの解決策が見えつつあり、本研究課題は概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず、ゲルへの増殖因子の担持や化学修飾が間葉系幹細胞の分化におよぼす影響を解析する。これらと力学特性の制御、分化誘導因子添加と組み合わせることで、生体での骨発生にみられる「軟骨内骨化」と「膜内骨化」を模倣した2つのプロセスによるゲル中での軟骨-軟骨下骨連続組織の作製を試みる。マイクロ流体技術を用いた配向性足場材料の開発においては、配向性形成の評価とゲル内への細胞の担持を進める。配向性が誘導されない、もしくは不十分であった場合、配向性をもたらす追加要素の利用についても検討する。
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Causes of Carryover |
学会発表予定の変更から旅費が不要となったため。次年度の学会発表にかかる旅費として使用する。
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