2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of small molecules that spontaneously oligomerize on trinucleotide repeats
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19K05693
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山田 剛史 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (80633263)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | DNA / RNA / トリヌクレオチドリピート / 低分子 / オリゴマー / ミスマッチ塩基対 / 分子認識 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究「異常伸長したリピートヘアピン上で自発的にオリゴマー化する低分子の開発」では、神経変性疾患の原因となる異常伸長した(CXG)nリピートが形成するヘアピン構造をテンプレートとしてオリゴマー化する分子の開発により、「疾患の原因となる長鎖リピートの選択的分子認識」を目的とした。 「リピートヘアピン上で自発的にオリゴマー化する低分子」の開発を目指し、これまで二種類の新規化合物を合成したものの、当初考えていたCGGリピートテンプレートオリゴマー化は観測されていない。しかしながら、誘導体の一つNCD-CTCは、CGGリピート存在下、環状部分が40員環に達する大員環化合物である二量体を形成するという興味深い性質を示した。 また、分子開発のためにNCD-CGG/CGG複合体のNMR構造解析を行い、NCDの結合によるDNAのリン酸バックボーンの強い巻き戻しが生じ、結合サイトで予想以上に強く曲がっている、いわゆる「DNAキンク」を起こしていることが示唆された。このNMR構造解析の結果は現在論文投稿中である。 また研究期間中にCAGリピートDNAに強く結合する合成低分子NAを基に、その二量体NAダイマーを新規に合成した。NAダイマーはNAと同様DNA中のCAG/CAGミスマッチ、CAGリピートDNAに強く結合した。次にRNAとの結合を確認した所、RNA中のCAG/CAGミスマッチには結合しないが、CAGリピートRNAには結合するという興味深い性質を示した。NAダイマーは「リピートヘアピン上で自発的にオリゴマー化する低分子」ではないものの、最終的な目標としていた「長鎖リピートの選択的認識」は達成した。 今後はNAダイマーのCAGリピートRNAへの結合状態の解明と、テンプレートオリゴマー化する分子デザインを中心に研究を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、(CGG)nリピートDNAに結合しジスルフィド結合を介して二量化する低分子NCD-CCをリード化合物に、2種類の新規化合物の合成を行った。誘導体の一種類目は、システイニルシステインの間にトリエチレングリコールリンカーを配したNCD-CTC、2種類目はNCD-CTCのNCDとCTC間のリンカーを更に長くしたNCD-3-CTCである。得られた誘導体がCGGリピートDNA上でオリゴマー化するか、HPLCとESI-TOF-MSで測定した。結果、NCD-l-CTCでは分子内環化体のみが、NCD-CTCでは分子内環化体・NCD-CTCダイマーが2:1程度の比率で観測されたが、オリゴマー化はどちらの誘導体でも観測されなかった。 前項の結果を踏まえ、目標とする分子の開発のためにはより正確性の高いNCD-CGG/CGG複合体の構造解析が必要不可欠と考え、横浜国大児嶋教授、大阪大蛋白研古板助教と共同研究を行い、NCD-CGG/CGG複合体のNMR構造解析を行った。二次元NOEとRDC測定の結果、NCD-CGG/CGG複合体は結合サイトで予想以上にキンクしている可能性が示唆され、分子デザインの改良によって初期に目標としたリピートテンプレート上でオリゴマー化する分子も得られると考えている。 上記の検討とは別に、CAGリピートDNAに結合する分子であるNAを元に新規に開発した分子NAダイマーが、RNA中のCAG/CAGミスマッチには結合しないが、CAGリピートRNAには結合するという興味深い性質を示した。研究題目とした「リピートヘアピン上で自発的にオリゴマー化する低分子」の目標は「長鎖リピートの選択的認識」であるため、NAダイマーによってその目的を達成することはできた。
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Strategy for Future Research Activity |
NCD-CTCは、当初考えていたCGGリピートテンプレートオリゴマー化は観測できなかったが、大員環化合物であるNCD-CTCの二量体がDNAと混合するだけで生成されたのは驚きであった。NCD-CTCの二量体は、環状部分は40員環に達し、マクロラクタムであると同時に一部クラウンエーテル構造も有している。今後は、NCD-CTC二量体の環状構造と、遷移金属などの錯体形成能について調べていきたい。 NCD-CGG/CGG複合体のNMR構造解析の結果は現在論文投稿中である。また得られた複合体構造を元に分子モデリング・MDシミュレーションなどによりリピートテンプレート上でオリゴマー化する分子の開発を目指す。 NAダイマーは「リピートヘアピン上で自発的にオリゴマー化する低分子」ではないものの目標としていた「長鎖リピートの選択的認識」は果たした。またNAダイマーは選択性が高く、CGGリピートなどの他のリピートには結合しない。今後はNAダイマーがどのような結合でCAGリピートRNAを認識しているか解明する。また近年CAGリピートRNAが細胞内で相分離して高次構造体を形成しているという興味深い報告が出ており、それらの実験にNAダイマーを用いることを検討している。
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Causes of Carryover |
本年度は必要な消耗品の購入に助成金を使用した。完全に使い切ることはなかったので、次年度以降に助成金を繰り越す。
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Research Products
(4 results)