2019 Fiscal Year Research-status Report
Selective and stable protein complex assembly by thermodynamic control of domain swapping
Project/Area Number |
19K05695
|
Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
長尾 聡 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (30452535)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | タンパク質超分子 / ミオグロビン / ドメインスワッピング / タンパク質デザイン / 金属結合性 / ヘリックス形成能 / 結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
天然ではタンパク質や核酸、脂質分子などから成るナノスケールの分子複合体が分子の自己集合により形成している。近年、このような単分子にはないユニークな機能を有する分子を人工的に制御して創るために、アミノ酸デザインや化学的手法などを用いた分子複合体の構築法が国内外で磨かれている。本研究では申請者がこれまで取り組んできた、単量体タンパク質の部分構造が分子間で交換して多量化するドメインスワッピングについての知見を基盤とした金属イオンや熱などによるタンパク質の多量体形成制御を目的とする。 令和元年度は、まず金属イオンへの配位性を有するアミノ酸をミオグロビンに導入し、ドメインスワッピングにより形成したミオグロビン二量体の金属結合性と構造について検討を行った。ミオグロビンのヒンジ領域はEヘリックスとFヘリックス間のEFループに位置しており、その前後で分子間構造交換を行うことでドメインスワップ二量体を形成する。そこで、二量体を形成したときにヒンジ領域付近で金属イオンを結合可能なアミノ酸環境を構築するため、ミオグロビンのヒンジ領域へのヒスチジン導入を行った。X線結晶構造解析により、変異型ミオグロビン二量体では導入したヒスチジンが配位子となってNi2+、Co2+、Zn2+と結合することが明らかとなった。次に、ヒンジ領域のアミノ酸残基の中で最もヘリックス形成能が低い80番目のグリシンをセリン、バリン、ロイシン、イソロイシン、アラニンに変異させると、アミノ酸のヘリックス形成能の順にドメインスワッピング傾向が高くなることが明らかとなった。ドメインスワッピング傾向が高い変異型ミオグロビンでは、70℃で30分加熱することにより、単量体から二量体が形成可能であった。以上より、金属イオンと結合可能な変異型ミオグロビン二量体の構築と、熱によってドメインスワップ二量体が形成可能な変異体の作製に成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題において目的とする、金属イオンや熱などの外部刺激によってドメインスワッピングによる多量体形成を制御するために、令和元年度はアミノ酸変異により、ヒンジ領域において金属イオンと結合可能なミオグロビン二量体の構築と、ヒンジ領域のアミノ酸のヘリックス形成能を増大させることによるドメインスワッピング傾向の向上に成功した。前者の知見は金属イオン、後者の知見は熱によってドメインスワッピングによるタンパク質の多量体形成制御に重要であり、今後の高次の多量体構造を有するタンパク質超分子の形成制御に役立つと考えられる。以上により、令和元年度はおおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和元年度では、金属イオンとの結合性を有する変異型ミオグロビン二量体の構築に成功し、そのX線結晶構造も明らかにしたことから、次の段階として金属イオンと結合したミオグロビンの熱安定性を調べ、構造に基づき二量体が単量体よりも安定になるアミノ酸デザインを検討する。一方、ヘリックス形成能を増大させた変異型ミオグロビンでは、二量体だけでなく四量体も安定化されていたことから、その構造を詳細に調べ、四量化の分子機構の理解を進める。
|
Causes of Carryover |
本年度は研究課題の実施に必要な微量分光光度計のNanophotomer(NP80、インプレン社)を設備備品費として計上し、購入した。一方で、研究代表者が2019年8月から2020年2月までミシガン大学(ミシガン州、米国)に滞在していたことから、予定よりも消耗品費と旅費が少なくなったため、次年度使用額が生じた。本研究課題の成果を既に学術論文を投稿し、掲載決定されていることから、次年度使用額は翌年度分と合わせて論文掲載料としての使用を予定している。
|
Research Products
(6 results)