2019 Fiscal Year Research-status Report
着せ替え可能なオンデマンド多機能ウイルス様ナノ粒子の開発
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19K05708
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
中道 優介 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究員 (20751217)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮崎 直幸 筑波大学, 生存ダイナミクス研究センター, 助教 (00634677)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ウイルス / ナノ粒子 / 多機能性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、イネ科植物に感染するイネ萎縮ウイルス(Rice Dwarf Virus: RDV)の構造的特徴を活かし、複数の異なる機能を粒子表面に同時に提示可能で、かつそれらの機能をオンデマンドで交換可能な多機能ウイルス様粒子 (MVNP) の開発を目指している。RDV粒子は正二十面体対称の二重殻キャプシドを有しており、主にP3タンパク質で構成された内殻粒子に、外殻タンパク質であるP8の3量体(P8_3量体)が重合することで形成される。これまでに、緑色蛍光タンパク質を融合したP8_3量体をRDVの内殻粒子表面の3回回転対称軸上 (合計20箇所) に特異的に結合させることに成功している。 本年度は、まずRDV内殻粒子のin vitroでの安定な調製を目的として、昆虫細胞発現系を用いた内殻タンパク質P3の大量調製法の確立を目指した。また、MVNPの粒子表面に酵素、各種結合タンパク質、並びに蛍光タンパク質などの機能性タンパク質を提示するため、昆虫細胞発現系を用いたP8-異種タンパク質融合変異体の発現系構築を進めた。一方、MVNPを用いた応用の1例として、異なる特性を示す複数の多糖分解酵素を同時に用いたバイオマス効率分解MVNPの作製を目指している。バイオマス分解MVNPを開発するにあたり、有望な特性を示す糖質加水分解酵素の立体構造を明らかにした。これにより、その酵素としての機能を保持しつつ、P3-P8間の結合を阻害しないような、P8-酵素融合タンパク質_3量体を調製するための分子設計が可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの研究では、成熟した二重殻のRDV粒子 (RDV感染イネから採取) から外殻タンパク質を取り除き、MVNPのベースとなる内殻粒子を調製してきた。現在は、今後の機能拡張や改変を見越して、組換えタンパク質発現系を用いた内殻粒子の調製を目指して実験を進めている。昆虫細胞-baculovirus発現系を利用して、内殻粒子を構成するタンパク質P3の発現を目指しているが、現状では十分な量のタンパク質が得られていない。 一方、外殻タンパク質P8に結合する候補として有望な酵素について、立体構造を解明した。これにより、P8と内殻粒子との結合を妨げず、かつ機能を発揮することが可能なP8_酵素融合タンパク質の設計が可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
P3タンパク質の発現条件を最適化する。また、in vitroで作製した内殻粒子だけでなく、二重殻RDV粒子から調製する内殻粒子を用いてP8-異種タンパク質融合体の結合実験を進める。複数種類のP8-異種タンパク質変異体を調製し、同時結合実験を進める。
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Causes of Carryover |
使用計画作成時には、本年度中にMVNPを複数種類作製後、それらの解析に進む予定であったが、粒子やP8タンパク質の調製条件の検討を優先して進めた結果、解析用に計上していた予算が残った。次年度は、引き続き粒子とP8タンパク質の調製を進めつつ、MVNPを作製し、その解析まで進める。今年度と同様の研究に加えて、解析に必要な試薬やカラムなどを購入するため、使用額として計上した。
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