2019 Fiscal Year Research-status Report
Digital chemical mapping by treatment of narrow-band LED light in the plant metabolome
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19K05711
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
草野 都 筑波大学, 生命環境系, 教授 (60415148)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
立川 仁典 横浜市立大学, データサイエンス学部, 教授 (00267410)
青木 裕一 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 助教 (40747599)
福島 敦史 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 研究員 (80415281)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 量子化学 / メタボロミクス / 機械学習 / 一次代謝 / 二次代謝 / 植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は研究分担者である立川(横浜市立大学)、福島(理化学研究所)および研究協力者である桑畑(横浜国立大学)らとともにシロイヌナズナがUV-B照射時に蓄積する化合物であるシナピン酸、フラボノール3種類およびアントシアニン2種類に着目し、量子化学計算により得た物性値と紫外線吸収スペクトル分光法で得た実測値の精度比較を行った。その際、半経験的分子軌道計算を適用することにより、これまで必要であった多大な計算能力を必要とせずに各化合物における紫外可視吸収極大波長の実測値を十分予測可能であることを見いだした。本成果は第13回メタボロ―ムシンポジウムで発表するとともに、査読付き論文として報告した(桑畑ら (2019))。また、メタボロ―ムデータの視覚化法についても査読付き論文を報告できた(神谷ら(2019))。 開発した計算手法を用いることにより、数千におよぶ化合物の物性値を短期間の計算時間で入手することが可能となった。次に必要となるのは化合物の構造情報である。従来、化合物情報は分子構造式エディタソフトを用いて手入力するのが主流である。この方法では、得られる化合物構造情報入手に非常に時間がかかってしまうため、本研究ではバイオインフォマティクスによる構造情報取得の自動化法の開発に着手した。 量子化学計算を適用するための新たな実測値を得るため、光質に着目した実験デザインを設定した。具体的には、シロイヌナズナ野生株に異なる光質照射を行うために紫色光から遠赤外光をカバーした狭波長LED照射装置を作製した。2019年度は植物の生育および代謝に影響を与えることが知られている青色光および赤色光処理の違いによる代謝物の変化を捉える実験を行った。サンプリングは終了しており、2020年度中に代謝物群の変化を質量分析装置により解析し、量子化学計算値と比較するための化合物情報を取得する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、2019年度中にシロイヌナズナ野生株に対する青色光および赤色光照射処理実験により得たサンプルのメタボロ―ム解析まで終了する予定であった。しかし、新型コロナウィルスの影響により実験が制限されたため、メタボロ―ム解析データの入手には至らなかった。実験制限が解除された時点で早急に解析を進める予定である。 2019年度では本予算を用いて国際メタボロミクス学会(Metabolomics2019)に参加し、最新のメタボロ―ム研究手法について情報を収集した。その後、研究分担者らと情報を共有およびディスカッションを行った。新型コロナウィルスの影響により、年度末における研究成果および今後の進め方についてやや議論不足になってしまったことは否めなかったと考えている。 しかし、これらは研究遂行にあたって深刻な問題とはなっていない判断したため、進行状況は概ね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、植物体を用いた実測値が思うようにいかないことを考慮して、異なる光質や光強度で量的変化を示す化合物について論文等に記載されている実測値情報をマニュアルキュレーションにより入手する。この方法は人手と時間を要するため、各種光条件下で大きく変動する化合物にのみ着目する。また、2019年度で開発した半経験的分子軌道計算による物性値推定法は実測値との高い相関を示すことから、実測値との比較を経ずに化合物の構造情報から得た物性値を用い、生合成経路への反映を試みる。このトライアルにより、機械学習による生合成経路予測関数を決定するための知見を得る予定である。
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Causes of Carryover |
2019年度は新型コロナの影響により、メタボロ―ム解析を完了できなかったことおよび機械学習等を行うにあたって準備すべき計算機環境をそろえることができなかった。よって2020年度できるだけ早期に実行するとともに、今後の研究の推進方策に示した項目を進める予定である。
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