2019 Fiscal Year Research-status Report
Screening for the Origin of Halichondrin B
Project/Area Number |
19K05720
|
Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
上村 大輔 神奈川大学, 公私立大学の部局等, 教授 (00022731)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 孝宏 神奈川大学, 付置研究所, 研究員 (00422741)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | クロイソカイメン / 免疫染色 / オカダ酸 / ハリコンドリンB |
Outline of Annual Research Achievements |
既に抗オカダ酸抗体は販売されている為、まず先行実験としてオカダ酸の生物オリジン探索を進めることにした。クロイソカイメン破砕液を抗オカダ酸抗体で免疫染色した。免疫染色したサンプルを用いてフローサイトメトリーで回収した。蛍光顕微鏡での解析の結果2種類の微生物を確認した。ゲノムを抽出して同定した結果、一つはParacoccidioides属と95%の相同性を示す真菌、もう一つはVibrio属、Renibacterium属を中心としたバイオマットであることを明らかにした。 また、カイメン破砕液を固定せずに免疫染色、回収を行い、真菌の培養に成功した。培養した真菌は抗オカダ酸抗体で免疫染色されることを確認した。結果、微生物を生きたまま免疫染色し、染色された微生物を回収し培養することに成功した。真菌培養抽出物を展開したTLCプレートを抗オカダ酸抗体で免疫染色した結果、蛍光を示すバンドを確認した。 また、各微生物のゲノムを次世代シーケンサーで解析しゲノムマイニングを行った結果、真菌由来のLovastain生合成遺伝子を含む複数の遺伝子クラスターを確認した。さらに、細菌に関しても多数の酸化還元酵素をクラスター内に含む放線菌由来のPKS遺伝子クラスターを確認した。 一方、ハリコンドリンB生物オリジンに関しては、ノルハリコンドリンAの抽出および濃縮を行い、コンジュガーゼとして抗体の抗原に利用するためスペーサーを結合したノルハリコンドリンAの合成を行った。具体的には4-ブロモフェナシルブロミドと4-カルボキシフェニルボロン酸を出発物質として用いて鈴木宮浦反応を行い、収率は低いものの目的とする化合物を得ることに成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オカダ酸生物オリジンのゲノムマイニングは遅れているが、全体的には予想通りの成果が出ているので、上記の自己評価とした。特に、カイメンという複雑な生物系より免疫染色法とフローサイトメトリーを効率的に利用し、免疫染色した微生物の単離・培養に成功した点や、TLC法と免疫染色法を組み合わせて抗原となった天然物のバンドを特定した点を考えれば、予定以上に進捗したと言える。2020年度中にオカダ酸の生物オリジンを決定する。またハリコンドリンB生物オリジンに関しては抗原に利用するためのスペーサー付加を行った。ただ、収率を向上させる必要があり、検討を続けている。残りの研究期間を十分に活用して、本計画をより一層加速、発展させて学術面のみならず、社会に対して貢献したい。
|
Strategy for Future Research Activity |
既に抗オカダ酸抗体と抗原抗体反応を示す微生物を確認した。複数存在する理由は抗体の交差性によるためと考えられる。先ずはオカダ酸の生物オリジンを確定する。具体的には、真菌に関しては既に培養に成功している。そこでTLCの結果をもとに抗原抗体反応を示す天然物の構造決定を行うことでオカダ酸の確認を行う。バクテリアに関しては次世代シーケンサーのデータを元にゲノムマイニングを進める。オカダ酸は同位体の取り込み実験でPKS以外にもHMG-CoA Synthaseの関与が推測される。それらの指標をもとに遺伝子クラスターの探索を行う。 ハリコンドリンBの生物オリジンに関しては、マウスもしくはラットを用いた抗体作製を始める。これは受託で行う予定である。また、オカダ酸生物オリジン研究において、カイメン破砕液を対象とした免疫染色実験では交差性の問題が生じることを確認した。ハリコンドリンB生物オリジン研究ではエピトープの異なる複数の抗体を作製することで克服する。抗体作成時にスペーサーの接続位置の異なるノルハリコンドリンAを用意することで、エピトープの異なる抗体を作製する。 また、特異な構造をもつ化合物の生合成経路を、遺伝子情報をもとに解析するにおいてゲノム情報だけでなくRNA情報も利用したい。抗体の蛍光強度を指標にフローサイトメトリーで天然物の生産量の異なるセルをそれぞれ回収しRNA発現量を比較することで生合成に関与する遺伝子の特定を行う。
|