2020 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of algal morphogen biosynthetic machinery from an epiphytic marine bacterium and its heterologous reconstitution.
Project/Area Number |
19K05724
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
兼目 裕充 徳島文理大学, 薬学部, 准教授 (10399438)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | サルーシン / 藻類共生細菌 / テルペノイド / 生合成 / 変異株 / 抗生物質 / ヒトエグサ / 分化誘導 |
Outline of Annual Research Achievements |
アオサ藻綱ヒビミドロ目に属するヒトエグサ類は、いわゆる「あおさ」や「あおのり」として世界的にも食品需要が高まっているが、環境悪化等に起因する採苗や養殖管理の難しさから本邦の生産量は年々減少している。その一方で、同綱アオサ目のアオサ(食用ではない)はグリーンタイドと呼ばれる爆発的な増殖現象を引き起こし、世界各地の海で問題となっている。このような背景から、アオサ藻綱藻類の生活環を制御する分化誘導因子や共生細菌との関係についての研究は各方面から強く要望されている。近年、これらの海産藻類の葉状体分化を極微量で誘導するメロセスキテルペノイドのサルーシンが、分化誘導の必須成分として藻類共生細菌より見出されているが、この共生細菌においては、なぜ、どのようにサルーシンを生合成しているのかについては全く解っていない。そこで、本研究では、生産細菌が持つ全てのサルーシン生合成酵素遺伝子類を明らかにすると共に、これらの遺伝子の発現制御機構を解明したい。また、生産細菌自体のサルーシン生産能は非常に低いことから、生合成経路を再構築することによって、サルーシンの効率的な大量生産システムの確立へと発展させたい。 当該年度は昨年度に取得した数種のサルーシン高生産株について、発現遺伝子解析およびゲノム解析を行い、高生産に繋がる責任遺伝子の探索を行った。また、明らかになった責任遺伝子に関連する培地組成の検討を行い、野生株においてもサルーシン生産量を向上させるいくつかの培地成分の特定に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では生合成酵素遺伝子クラスターの個々の候補遺伝子のノックアウト株の作出と、これらの逐次培養によるサルーシン生産性の有無の検証を企図していたが、細菌で一般的である明瞭な遺伝子クラスターを本細菌は示していなかったことから、昨年度は平行して進めていた抗生物質耐性変異株からの高いサルーシン生産性を示す変異株のスクリーニングにより、数種のサルーシン高生産性変異株を取得できた。本年度はこれらの変異株について発現遺伝子解析およびゲノム解析を行い、高生産に繋がる責任遺伝子の探索を行った。さらには、明らかになった責任遺伝子に関連する培地組成の検討を行い、野生株においてもサルーシン生産量を向上させるいくつかの培地成分の特定に成功した。一方、細菌培養液からの分離・精製方法については、昨年度に簡便かつ堅牢な定量分析前処理方法を確立するに至ったが、本年度は抽出時に用いる樹脂のさらなる検討を行い、サルーシンの効率的な抽出方法を改善することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでゲノム上で大きく3領域に分かれて緩やかに分散していると考えていたサルーシン生合成候補酵素遺伝子群について、本年度の変異株の発現遺伝子解析およびゲノム解析の結果からも確認することができた。従って、当初の計画にあった個々の候補遺伝子のノックアウト株の作出と異種発現系の構築を行い、これらの逐次培養によるサルーシン生産性の有無の検証を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
得られた変異株のうち数株については、予算超過のため発現遺伝子解析およびゲノム解析を見送った。これらについては次年度分の助成金と合わせて解析を行う。
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