2019 Fiscal Year Research-status Report
解糖系やグルタミン代謝を標的とする抗腫瘍化合物の探索と化学生物学的な作用機序解明
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19K05726
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Research Institution | Microbial Chemistry Research Foundation |
Principal Investigator |
竹内 倫文 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所, 研究員 (40516176)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | エネルギー代謝 / 化学生物学 / 天然物 / 放線菌 / 阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
がんは,様々な遺伝子変異の蓄積によって解糖系やグルタミン代謝などのエネルギー代謝経路を変化させて生存・増殖を有利にする.したがって,がんの代謝を阻害する化合物は,がん特有の代謝経路を利用した抗がん剤の候補として期待される.本研究ではグルタミン代謝補償試験を用い,グルタミンの代謝に影響を与えうる化合物を放線菌の培養液から探索した.グルタミン代謝補償試験はグルタミンまたはジメチルケトグルタル酸 (DMKG) を含む培地で培養した細胞に対する薬剤感受性を評価するものである.グルタミンはケトグルタル酸 (KG) に代謝されクエン酸回路に導入される.DMKG は KG に代謝されグルタミン代謝を補償する.したがって,前者の培地選択的に毒性を示す化合物はグルタミン代謝に影響を及ぼすことが期待される.本探索から得られた放線菌の培養液を,グルタミン代謝補償活性を指標に繰り返し精製し分子量約250及び500の2つの新規天然物を得た.分子量約250の新規天然物は生物活性を示さなかった.一方分子量約500の天然物はグルタミン代謝補償活性,がん細胞に対する細胞増殖抑制活性,細胞内のグルタミン量を減少させる活性を示した.各種スペクトル測定(MS, NMR(1H,13C-NMR, DEPT,COSY, HSQC, HMBC))により,本天然物の平面構造を2つの異常アミノ酸からなる新規アシルジペプチドと決定した.今後,立体配置を含む本天然物の構造を決定する計画である.さらに研究計画に従い,適切な分子プローブへと導き本天然物の化学生物学的な作用機序解析を行う.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グルタミン代謝補償試験を用いグルタミンの代謝に影響を及ぼす化合物を探索した.その結果,グルタミン代謝に影響を及ぼす放線菌の培養液を得た.生物活性を指標に本培養液を繰り返し精製し細胞内のグルタミン量を減少させる分子量約500の新規天然物を得た.各種スペクトル測定により本天然物の平面構造を決定できた.本天然物はα置換スタチン及びβメチルフェニルアラニンを含むアシルジペプチドであった.
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従い,本天然物の構造を決定する.さらに適切な分子プローブへと導き本天然物の化学生物学的な作用機序解析を行う.
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Causes of Carryover |
研究計画に従い,分子量約500の新規天然物の構造を決定する.さらに適切な分子プローブへと導き本天然物の化学生物学的な作用機序解析を行う.
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