2020 Fiscal Year Research-status Report
抗アルツハイマー病薬を目指す可溶性アミロイドβオリゴマー形成阻害物質の開発と評価
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19K05728
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
上井 幸司 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 准教授 (80347905)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / アミロイドβ / オリゴマー / 凝集阻害物質 / 構造活性相関 |
Outline of Annual Research Achievements |
超高齢社会に伴う患者数の増加が予想されるアルツハイマー型認知症 (AD) は認知症の半数以上を占め,早急な対応が望まれるが,現状は対処療法しかない.こ の問題を克服するために,本研究は,AD患者の脳内で異常に凝集し,神経細胞障害の原因となるアミロイドβタンパク質の凝集を阻害する物質,その中でも特に 毒性が高いとされる低分子オリゴマーの形成を阻害する物質を天然植物や食品から見つけ出し,化学的により作用の強い構造へと導き,その作用を核磁気共鳴法 などの分析法や,試験管レベルや動物実験などの生物学的な方法により検証することで,新しいAD予防・治療薬の開発へと繋げようというものである. 昨年度に引き続き,可溶性オリゴマー形成阻害活性を有する素材からPIC-UP 法- SDS-PAGEを指標に,各種クロマトグラフィーを駆使して分画した.その結果,2つの高い活性を示す化合物を単離することができた.これらの化合物は物質としては既知の化合物であったが,可溶性オリゴマー形成阻害活性としては新規な機能性の報告となる.これらの物質の可溶性オリゴマー形成阻害活性を確認し,実際に生体内での活性を評価するために,この化合物の化学合成を試みた.その結果,グルコースや経皮酸,没食子酸といった安価な出発原料から合成する経路を確立することができた.この知見をもとに,これらの化合物を種々の類縁化合物に誘導して可溶性オリゴマー形成阻害活性および抗酸化活性について構造活性相関の検討を進め,フェノール性水酸基の活性への寄与や化合物の疎水性と活性との相関を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で記したように,アミロイドβオリゴマー形成阻害活性を示す化合物を単離・構造決定し,それらの化合物の科学合成および構造活性相関を行なった結果,活性発現のための化合物の構造的要因が解明されつつある.また,動物試験に向けて使用する物質の量を確保することができた.これらのことにより,本研究は順調に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
今後も,昨年度に引き続き本研究の目的が達成できるよう,研究計画にもとづいて推進していく.合成した化合物が実際に生体内で認知機能を維持できるのか,動物実験を実施して検証する.その結果をin vitro試験の結果と比較検証しながら,より活性の高い構造を有する誘導体を合成し,抗アルツハイマー病薬のリード化合物となる新規活性化合物を見いだしていく方針である.
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Research Products
(3 results)