2019 Fiscal Year Research-status Report
効率的な2本鎖DNA認識を達成するペプチド核酸の開発
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19K05730
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
愛場 雄一郎 名古屋大学, 理学研究科, 助教 (10581085)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | DNA / PNA / ペプチド核酸 / インベージョン / 核酸 / 遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
2本鎖DNAの配列選択的認識は基盤的な技術であるがゆえ、応用可能性は非常に高く、ゲノム編集、遺伝子発現制御などの幅広い展開が可能である。それに対しこれまでは、Zinc Finger、TALE、Cas9などのDNA結合タンパクを利用して、主に研究が進められてきた。もし合成分子で2本鎖DNAを配列選択的に認識することが出来れば、実験手技の大幅な簡便化だけでなく、従来のDNA結合タンパクにはない新たな研究展開が期待される。そこで本研究では、人工核酸であるペプチド核酸(Peptide Nucleic Acid, PNA)の特徴的な2本鎖DNA認識様式であるインベージョンに着目し、新たなDNA認識技術の構築を目指した。これまでのインベージョンでは、PNAの核酸塩基部への複雑な化学修飾が効率的なDNA認識効に必須であった。しかし、その合成は煩雑であり、このPNAの合成面が、インベージョン応用研究の汎用化への足かせとなっていた。 本研究では、必要となる核酸塩基への化学修飾を簡素化することで、より簡便なPNA合成を達成し、様々な応用研究に適応しやすいインベージョン系の構築を目指した。今年度は、市販のPNAモノマーであるFmoc-G PNAモノマーを利用し、1ステップの非常に簡便な化学修飾を用いることで、PNAのインベージョンの促進を検討した。具体的には、正電荷を核酸塩基中に導入することで、PNAのDNA結合力の向上および、PNA間の相互作用の抑制を同時に達成し、より高効率なインベージョン系の構築に成功した。PNAのインベージョン効率はマイクロチップ電気泳動により評価を行い、PNAによるDNAおよびPNA認識については、UVによる融解温度測定により融解温度Tmを算出し、設計通りに正電荷導入PNAが機能していることを確認した。さらに、従来のPNAでは効率的なインベージョンが困難であった生理的条件下でも高いインベージョン効率を示すことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題「効率的な2本鎖DNA認識を達成するペプチド核酸の開発」に向けて、申請書には大別して3つの研究テーマの検討について記載した。そのうちの1つ目が、塩基部位への正電荷導入を用いた新規インベージョン系の開発である。本テーマに関しては、前述のように検討を終え、学術論文として発表を行った(M. Hibino, Y. Aiba*, and O. Shoji*. “Cationic guanine: positively charged nucleobase with improved DNA affinity inhibits self-duplex formation”, Chem. Commun., 56(17), 2546-2549 (2020).)また、査読の際にその研究成果を評価され、inside back coverとして採択された。現在は正電荷導入PNAのさらなる応用研究について、共同研究も含めながら展開を進めている。さらに、現在は申請書に記載した残りの2つのテーマを前倒して検討を進めており、当初の計画以上の進展であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
申請書には、前述の「効率的な2本鎖DNA認識を達成するペプチド核酸の開発」に加えて、「化学修飾に依存しない新しい配列設計を用いたインベージョン系を構築」を行うことで、インベージョンの手技の簡便化とその認識効率の向上を図ることを記載している。さらに、「従来明らかでなかったPNAのインベージョン複合体の構造解析」を行うことで、詳細な構造情報に基づき、PNAをはじめとした次世代の人工核酸に対する合理的な設計指針の構築を目指す点も重要な研究課題として挙げている。今後の研究期間内には、上記2点について重点的に検討を進め、PNA(特にPNAによるインベージョン)を汎用的な2本鎖DNA認識技術として完成させることを目指したい。また、本研究課題の研究期間全体で得られた技術を統合し、様々な生命現象の解明を目指した応用展開につなげたいと考えている。
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