2019 Fiscal Year Research-status Report
小分子化合物と光によるタンパク質分解の時空間的制御
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19K05733
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹本 靖 京都大学, 化学研究所, 助教 (50453543)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ケミカルバイオロジー / 小分子化合物 / 光照射 / タンパク質分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、スクアレン合成酵素(SQS)の阻害剤であるYM-53601を細胞に添加し、紫外線を照射すると、SQSが選択的に分解されることを発見し、この分解にはSQSのC末領域が重要であることを見出していた。そこで、本年度は、この分解機構について詳細に解析した。 YM-53601によるSQSの光分解は、プロテアソーム阻害剤、オートファジー阻害剤、あるいはペプチダーゼ阻害剤存在下でも生じたことから、この光分解は細胞に備わった分解機構を利用していないと考えられた。そこで、光照射によりYM-53601からラジカルが生成し、これがタンパク質分解を誘導しているのではないかと考え、ESRによりラジカルが生成しているか検討した。その結果、紫外線照射によりYM-53601のC-O結合が開裂し、ラジカルを生成していることが明らかとなった。また、YM-53601の誘導体を用いた解析の結果、ラジカルの生成能とタンパク質の分解活性に正の相関が認められた。さらに、試験管内で、SQSのC末領域由来のペプチドが、YM-53601の存在下で紫外線照射により選択的に分解された。また、EGFPタンパク質にSQSのC末領域を付加したタンパク質も、試験管内で、紫外線照射によりYM-53601の存在下で分解が誘導され、この分解はラジカルスカベンジャーであるDMPOの添加により抑制された。以上の結果より、紫外線照射によりYM-53601が開裂してラジカルが生成し、SQSのC末領域からプロトンを引き抜き、これが引き金となってタンパク質全体が分解されることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
YM-53601によるSQSの光分解機構を明らかにすることができたから。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の結果より、紫外線照射によりYM-53601から生成したラジカルが、SQSのC末領域が融合されたタンパク質の分解に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。そこで、今後は、光照射によるラジカルの生成能を考慮に入れて、より長波長の光でタンパク質に光分解を誘導する、あるいはより短時間の紫外線の照射でタンパク質に光分解を誘導できるYM-53601の誘導体の作製を行う。 また、特定の細胞で任意のタンパク質を除去できる本手法の有用性の実証を、いくつかのモデル系で試みる。そして、本手法をタンパク質の時空間的機能の解明研究に応用する。
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Causes of Carryover |
当初は、YM-53601の誘導体を様々に作製し、より長波長の光でSQSに対し光分解を誘導できる誘導体の開発を行おうと考えていた。しかし、YM-53601による光分解機構を詳細に理解した上でYM-53601の誘導体展開を行った方が、効率的に誘導体展開を行えるのではないかと考えた。そこで本年度は、まず、YM-53601によるSQSの光分解機構の解明に焦点を当てて研究を進めた。そのため、本年度の誘導体展開に使用する予定だった予算を次年度に繰り越すことにした。この繰り越した予算は、次年度、YM-53601の誘導体展開や、その応用研究に使用する。
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Research Products
(2 results)