2019 Fiscal Year Research-status Report
線維形成能および細胞毒性を有する短鎖ペプチド配列の予測・探索法の確立
Project/Area Number |
19K05741
|
Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
臼井 健二 甲南大学, フロンティアサイエンス学部, 准教授 (70543792)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅谷 智弘 甲南大学, 知能情報学部, 准教授 (10397630)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ペプチド / 線維 / モノマー化法 / 画像解析 / 統計解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
中分子であるペプチド、特に線維形成ペプチドを用いた材料創製は各方面で重要になっている。しかしながら、未だにどのような配列が線維形成し、細胞毒性などを発現するのか、という根本的な学術的「問い」に対する答えは見出されていない。そこで本研究では、申請者がこれまで開発してきたペプチドアレイ構築手法や統計解析手法、および研究分担者の画像解析手法やパターン認識手法を駆使して、二次構造を形成する最小単位に近いテトラペプチドのミニライブラリをモデルとして、線維形成・毒性発現配列を予測でき、配列設計が策定できるような手法の確立を目指した。今年度はまず、ペプチドのモノマー化システムである塩基性条件下でペプチドが容易に遊離できる樹脂ビーズを用いる手法の確立を行った。本研究成果はProcesses誌にてFeature Paperとして表紙に採用され、2020年4月に発行となっている。ライブラリ設計では、線維化しやすい配列や長さなど過去の知見を参考に数十種類に絞り込んだモデルライブラリを検討した。具体的には、線維形成しゲル化するといわれているFF配列から両末端1残基ずつ追加した数十種類の配列からなるライブラリを高純度合成の最適化を行ったのちに構築した。また研究分担者を中心に画像データを来年度以降の高効率解析や統計解析に適用するために、数値化や機械学習、検証のための正解データの作成などを試みた。具体的には線維形成過程や分解過程の各種画像を取得し、そのTEM画像の解析を行って、線維そのものや線維が崩壊したようなもの、粒子などの形状による分類を数値化によって可能かの検討を行い、次年度に行う本格的な解析の足掛かりとした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していた構築したライブラリにおける線維形成測定・形状観察の最適化は新型コロナウィルス感染拡大に伴い、実験停止処置を取らざるを得なかったため、実験実施直前のまま現在に至っている。これ以外の進捗状況は予定通りである。その中で成果については期待以上となり、ペプチドのモノマー化システム構築についての論文がProcesses誌にて表紙に採用され、第8巻第4号の最注目論文として発表された(2020年4月発行)。データ解析についての進捗状況は計画通りであり、今後、成果発表を行っていく。また、関連研究で樹脂付きペプチドの応用例、合成法ノウハウの知見として活用できる、ペプチド樹脂によるアレルギー感作試験法の確立に関する論文は電子版にて2020年3月に発表できた。さらに関連研究のアミロイドの材料応用に関する研究についてもほぼ研究が終了し論文投稿を行う予定である。以上のようにメインの研究の遅れが少々あるものの、関連研究での成果はあげられていることから「やや遅れている」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
実験停止が解除され次第、早急に構築したライブラリにおける線維形成測定・形状観察の最適化を行っていく。その結果データを数値化し、統計解析を行っていくことを計画している。そののちに、線維形成・毒性発現配列の探索や、さらなるパラメータを追加することによる、データの多変量・統計解析を行っていく。どのパラメータを用いると有効そうかなどのデータの多変量・統計解析の準備段階は、実験停止期間でもある程度行うことができるので、実験開始の前にどのパラメータを追加した統計処理を行うのかを、予測や決定しておく。そのうえで、パラメータ取得に必要な測定があれば、その実験実施計画を立てておく。また関連研究であるアミロイドの材料応用に関する研究および、ペプチド樹脂のアレルギー感作試験に関する研究については論文投稿を行い今年度内の発行をめざす。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の感染拡大による実験停止措置による計画変更のため、次年度使用額が生じている。次年度においては、本年度使用予定だった物品費および、実験の再開にともなう物品費・装置メンテナンスなどの物品費・その他費用、成果発表のための論文投稿料に充てる計画を立てている。
|