2020 Fiscal Year Research-status Report
多対多インタラクトーム技術による宿主微生物相互作用の分子生物学的基盤の探求
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19K05745
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
矢崎 潤史 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 上級研究員 (70391597)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川島 祐介 公益財団法人かずさDNA研究所, ゲノム事業推進部, 研究員 (30588124)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Interactome / Proteome |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はラベルフリー多対多インタラクトーム技術による相互作用分子基盤の解明である。分子間相互作用解析において、鍵となる蛋白に相互作用する細胞内外の分子複合体の一斉検出技術の構築は重要な解決課題であるが、これまで確立されていない。本研究ではラベルフリー多対多インタラクトーム技術を構築し、これまで不可能であった細胞内の分子間相互作用一斉解析を行う。具体的には報告者が開発した蛋白質を基板上で合成・固定する技術(NAPPA;Nucleic Acid Programmable Protein Array)を利用し、これに細胞の蛋白抽出液を適用し質量分析を行うことで、ヒト蛋白に結合する様々な分子複合体をラベルフリーで一斉に検出を行う(wNAPPA-MS;well-based Nucleic Acid Programmable Protein Array)。 すでに小規模な陽性対照実験が終了し、4種類のヒト遺伝子(cJUN,cFOS,TP53,MDM2)からの合成蛋白をクエリとするwNAPPA-MSを作製・実施し、これらのクエリ蛋白にヒト培養細胞(HEK293株)の抽出物を適用、相互作用蛋白を質量分析により検出した。この結果、12種の既知、67種の新規蛋白-蛋白間相互作用(合計89種の相互作用蛋白)が発見され、本技術の整合性と革新性が証明された。これら新規に検出された相互作用が技術的に正しい結果であるかを確認するために1蛋白対1蛋白でのin vitro pull down法により検証を行ってきている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までおおむね順調に進行している。当初予定していたガラス基板上でのマイクロレベルでのスクリーニングを変更し、96ウェルプレートでのスクリーングを行うことで基板上での固定方法の開発がマクロレベルで行えるために研究の速度が上がった。
コロナの影響により長期の研究所の閉鎖、在宅勤務の推奨があった。しかしながら閉所明け上記の改良実験を進めることで、なんとか研究が進展している。もし可能であれば予算の延期を認められるような施策を希望する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、本研究予算により陽性対照遺伝子数を10種類以上に増やしヒト培養細胞(HEK293株)を利用しwNAPPA-MSを行い、得られた結果の統計的整合性を検証する。これには正確確率検定で相互作用が有意であるかを検定する。この実験に用いる50種類程度の遺伝子クローンを購入予定である。クローン準備・wNAPPA調製・相互作用は申請者が行い、LC-MSを用いた質量分析での相互作用蛋白同定は川島博士が行う。この実験後、wNAPPA-MSを用いて異なる細胞株(HeLa細胞、アトピー患者細胞)やヒト共生微生物分泌液を適用し宿主-微生物間相互作用蛋白複合体を同定する。具体的な計画を以下に記す。 1.リガンドプレートの準備(矢崎):プレートに固定するクエリとなる蛋白質にはタグ(HaloTag)が付いており、このタグを捕捉するリガンド化合物(クロロアルケイン)でコーティングされたプレートを準備する。 2.陽性対照各10種類以上の準備・蛋白発現・固定と発現チェック:上記に報告した小規模陽性区実験同様、陽性・陰性クローンからプラスミドDNA抽出し、10種類以上をリガンドプレートに分注し無細胞系で発現・固定・精製しする。 3.蛋白間相互作用の多対多検出:96ウェルプレートの多数種の蛋白に対し細胞抽出物を適用する(例:50対多の相互作用)。その後質量分析により各ウェル内の相互作用蛋白をLC-MSにより同定する。同時に使用した細胞抽出物の発現量定量解析を質量分析により行う 4.細胞内分子ネットワーク構築と有意性検定(矢崎):上記ステップ3の結果から細胞内相互作用ネットワークを構築し、個別に確認実験を行う。その結果から、陽性・偽陽性・陰性・偽陰性をカウントしフィッシャーの正確確率検定により有意性検定を行う。
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Causes of Carryover |
コロナ禍による緊急事態宣言により研究所が一時閉鎖され、使用予定の試薬・物品類の購入、学会への参加がすべて不可能となり、継続的な研究(実験・発表)がストップした。閉所明け後、研究を再度開始する際に物流の遅延、納品にこれまで以上の時間を要し研究計画に戻るのに多大な時間と労力を要したため、次年度使用額が生じた。
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Research Products
(4 results)