2020 Fiscal Year Research-status Report
ナチュラルバリエーションとイオンビーム変異体を利用したマグネシウム吸収機構の同定
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19K05751
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 奈通子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (60708345)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市橋 泰範 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, チームリーダー (20723810)
小堀 峻吾 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, 開発研究員 (20792691) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | MutMap法 / 低マグネシウム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、体内マグネシウム濃度に違いのあるシロイヌナズナaccessionと、イオンビーム照射によって体内マグネシウム濃度が低下したイネ変異株を材料として、それぞれのマグネシウム動態の解析と、原因遺伝子の特定を通じて、低マグネシウム遺伝子座を特定することを目的としている。本年度は、イネ変異体と親品種を交配して得られたF2集団96個体の第4葉葉身のマグネシウム濃度に基づいてMutMap解析を行った。その結果、一番染色体の20 Mb付近に、高マグネシウム集団と低マグネシウム集団の間におけるSNP-indexが1となる領域を見出した。この領域についてさらに詳細な検討を行ったところ、低マグネシウム集団のゲノム上にlong deletionが生じていることが判明した。そして、long deletionによって2遺伝子がノックアウトとなっていた。これらの遺伝子が、低マグネシウムの原因である可能性を検証するため、現在、変異体の作出を進めている。体内マグネシウム濃度の異なるシロイヌナズナaccessionとして、高マグネシウム品種Col-0と低マグネシウム品種Ove-0に着目し、低マグネシウムの原因となる遺伝子座をQTL-seqを用いて明らかにすることを目指した。本年度は、Ove-0型の低マグネシウム濃度を示すF2個体に、高マグネシウム品種であるCol-0を2回交配した集団80個体について、成熟葉のマグネシウム濃度を測定した。これらの結果に基づいて、現在、次世代シークエンス解析の準備を進めている。さらに本年度は、マグネシウムの体内分布(地上部/根 の比率)が低い品種も同定し、研究材料に加えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イネにおいてはMutMap解析によって低マグネシウム遺伝子の候補を絞り込むという当初目標を達成することができ、変異体の作出も順調に進んでいるため。シロイヌナズナのマグネシウム含量の品種間差の原因となる遺伝子領域の同定については、実験材料として、Ove-0型の低マグネシウム濃度を示すF2個体に、高マグネシウム品種であるCol-0を2回交配した集団を整えることができた。年度内に遺伝子同定には至ることができなかったものの、スクリーニングは完了し、次世代シークエンス解析の準備を進めている段階であることから、研究はおおむね順調に進展していると判断した。また、根でも地上部でも低マグネシウム含量を示す品種であるOve-0に加えて、本年度は、マグネシウムの体内分布(地上部/根 の比率)に特徴のある品種および変異体も新たに同定し、研究材料に加えることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
イネについては、低マグネシウム遺伝子候補をノックアウトした変異体の表現型を解析する。まず、体内無機元素含量測定によって低マグネシウム遺伝子を同定し、続いて、マグネシウム欠乏への感受性試験、および放射性同位元素Mg-28を用いたマグネシウム動態の追跡により、体内マグネシウム濃度の制御機構における当該遺伝子の役割について考察する。また、当該遺伝子がコードするタンパク質の種類に応じて、RNA-seq解析やプロテオーム解析なども加える。シロイヌナズナにおける低マグネシウム遺伝子の候補を絞り込むことは、次年度における最初の目標となる。QTL-seq解析によって候補遺伝子を絞り込んだ後、各候補遺伝子をノックアウトした変異体を作出して、表現型を確認し、原因遺伝子の同定に結び付ける。マグネシウムの体内分布が特徴的な品種については、Col-0との交配によって作出されたF2集団を用いてスクリーニングを実施すると同時に、Mg-28トレーサー実験によって、体内マグネシウム動態の特徴を把握する。
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Causes of Carryover |
年度内に購入予定であったプラスチック製品が欠品となっていたことから購入できなかったため。次年度に日本国内に輸入されしだい、早々に購入する。
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Research Products
(1 results)