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2019 Fiscal Year Research-status Report

イネのビウレット傷害発生メカニズムの解明

Research Project

Project/Area Number 19K05755
Research InstitutionKyoto University

Principal Investigator

落合 久美子  京都大学, 農学研究科, 助教 (40533302)

Project Period (FY) 2019-04-01 – 2022-03-31
Keywordsビウレット / イネ / 窒素肥料 / 尿素
Outline of Annual Research Achievements

まず,イネのビウレット吸収量について,15N標識ビウレットを用いて検討した。イネ(日本晴)幼苗の水耕栽培培養液に0.3mMの15N標識ビウレットを与えて48時間吸収させると,イネの根と地上部にビウレット由来の標識窒素が検出された。培養液のビウレット濃度はビウレット添加後72時間まで一定であり,また,イネ幼苗粗酵素抽出液はビウレット分解活性を示さなかったことから,この結果は,ビウレットがイネ根に吸収され地上部に蓄積することを示唆している。ビウレット吸収量は根乾物1gあたりの48時間で25マイクロモルであった。また,土壌微生物由来のビウレット分解酵素遺伝子を過剰発現させたイネを用いて同様の吸収実験を行なった。形質転換体地上部には野生型株に比べて多くのビウレット由来窒素が検出されたことから,根でビウレットが分解されることによりビウレット由来窒素が地上部に多く移行するようになると推察した。加えて,HPLC分析法によるビウレット測定条件を検討し,イネ幼植物中のビウレット含有量の直接定量を可能にした。
また,ビウレットにより影響されるイネの代謝過程を検討し,ビウレットを与えて栽培したイネ幼苗では対照区に比べてアラントイン含有率が増加していることを見出した。現在,ビウレット傷害によるアラントイン蓄積についてさらに検討を進めている。
ビウレットの窒素肥料としての利用について検討するため,土壌微生物由来ビウレット分解酵素遺伝子過剰発現イネと野生型株を,窒素肥料として尿素またはビウレットを与えて登熟まで土耕栽培試験した。本年度の栽培試験では,イネ系統間にも処理区間にも生育の差は生じなかった。次年度以降も条件を変えて栽培試験を行う。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

2019年度の研究実施計画では(1)15N標識ビウレットを用いてイネのビウレット吸収量を評価すること,(2)網羅的解析手法を用いて,ビウレットにより阻害される代謝過程を明らかにすること,(3)ビウレット分解酵素遺伝子導入イネの栽培試験によりビウレットの窒素肥料としての利用可能性を評価すること, の3点を予定していた。
(1)について,15N標識ビウレットを用いた吸収実験により,ビウレットはイネ根に吸収され,地上部に著量移行することを明らかにした。さらに,植物体内のビウレットを直接定量する手法を検討し,親水性相互作用クロマトグラフィ用カラムを用いたHPLC法により,ビウレットの定量を可能にした。
(2)について,まずは窒素化合物代謝に着目して検討を開始したところ,ビウレットを与えたイネではプリン塩基の代謝過程で生じるアラントインが蓄積していることが明らかにされた。そこで、見出されたアラントイン蓄積について,処理期間と蓄積量の関係等の解析を進めた。
(3)についてビウレットを添加した土壌でビウレット分解酵素遺伝子過剰発現イネを栽培した。2019年度の栽培試験では,ビウレットの窒素肥効は最終的には尿素と同等であることが示された。しかし,施肥条件を変えてさらに試験する必要があると考えている。
上記の結果について1件の学会発表を行い、論文1報を投稿中である(プレプリントサーバに登録して公開しているhttps://doi.org/10.22541/au.158636282.25595291)。以上のことから,研究は概ね順調に進展していると考える。

Strategy for Future Research Activity

植物体内のビウレット含有量と傷害発生の関係について検討する。ビウレットの定量法には,銅イオンとの錯体を形成させ比色定量する方法があるが感度が低く植物試料中のビウレット定量の目的には適さない。より感度が高い方法としてHPLCを用いた紫外吸光検出があるが,私達がこれまで用いていた条件ではイネのもつ紫外吸収物質との分離ができていなかった。2019年度にHPLC分離条件を検討し,イネ植物試料中のビウレットの定量が可能になった。そこで,この測定方法を用いてイネ植物体内のビウレット蓄積についてさらに検討を進める。
2019年度の検討により見出されたビウレット傷害によるイネのアラントイン蓄積について検討を進める。植物体内でアラントインは,尿酸の分解によって生じアラントイン酸へと代謝される。まずは、ビウレットによるアラントイン分解酵素活性の阻害について,粗酵素抽出液を用いて検討する。また,生成と分解に関わる酵素の遺伝子発現変化について検討を行う。別途,ビウレットにより影響される代謝反応について他の候補の探索も進める。
ビウレットの肥料としての利用について,栽培条件を変えてさらに検討する。

Causes of Carryover

次年度使用額は、論文投稿にかかる費用を計上していたが、年度内に受理に至らなかったために生じた。当該助成金については論文投稿費用として使用する計画である。

  • Research Products

    (1 results)

All 2019

All Presentation (1 results)

  • [Presentation] イネのビウレット傷害発生機構の検討2019

    • Author(s)
      野村洋介・上杉明日香・落合久美子・間藤徹
    • Organizer
      2019年度(第115回)日本土壌肥料学会関西支部講演会

URL: 

Published: 2021-01-27  

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