2020 Fiscal Year Research-status Report
植物根圏におけるヨウ素還元機構の分析化学的、分子遺伝学的解明
Project/Area Number |
19K05756
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
西田 翔 佐賀大学, 農学部, 准教授 (40647781)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山上 睦 公益財団法人環境科学技術研究所, 環境影響研究部, 副主任研究員 (60715499)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ヨウ素 / 根圏 / シロイヌナズナ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、シロイヌナズナの根が放出するヨウ素酸還元物質を同定し、さらにヨウ素還元に関わる遺伝子を同定することで、植物根圏におけるヨウ素酸還元機構を明らかにすることを目的としている。 1.イオンクロマトグラフィー(IC)を用いたヨウ素酸還元アッセイ系の確立:分析スループットを向上させるために、IC-ICPMSを用いないICによるヨウ素酸還元アッセイ系の確立を目指した。標品の分析から、還元後に生成されるヨウ化物イオンは5マイクロMまでは十分な精度を持ってICを用いて測定ができることを確認した。また、シロイヌナズナの野生型の根を用いたヨウ素酸還元アッセイから、IC-ICPMSとICの測定で有意な差がないことを確認した。 2.シロイヌナズナの根が放出するヨウ素酸還元物質の同定:前年度までにヨウ素酸還元物質はアルコールにも溶解性を示さない極めて親水性の高い化合物であることが示されていた。植物が生産する親水性還元物質としてアスコルビン酸およびグルタチオンが知られている。そこで、それぞれの生合成を担う遺伝子を欠損した変異体を入手し、根のヨウ素酸還元能を評価した。その結果、アスコルビン酸合成遺伝子の変異体の根ではヨウ素酸還元能に変化は認められなかったが、グルタチオン合成遺伝子の変異体では野生型と比較して20%程度ヨウ素酸還元能が低下することが明らかとなった。さらに、グルタチオンの標品を用いた試験から、グルタチオンにはヨウ素酸をヨウ化物イオンに還元する活性があることを確認した。以上の結果から、グルタチオンがシロイヌナズナ根圏においてヨウ素酸を還元していることが強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的物質および関連遺伝子の有力候補を見出すことができ、研究が大きく前進した。
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Strategy for Future Research Activity |
グルタチオンがヨウ素酸還元に関わることの確証を得る。そのために、別のグルタチオン合成変異体を入手しヨウ素酸還元能の評価を行う。また、グルタチオン合成阻害剤がヨウ素酸還元に与える影響を調べる。さらに、グルタチオン合成変異体ではアポプラスト中のグルタチオン量が低下していることを確認する。グルタチオン合成変異体のヨウ素集積性を野生型と比較することで、ヨウ素還元がヨウ素集積に与える影響を調べる。 以上の成果を論文としてまとめ、国際誌に投稿する。
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Causes of Carryover |
消耗品費で若干の差額が生じたため、残額を次年度の消耗品費に充てる。
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Research Products
(7 results)