2020 Fiscal Year Research-status Report
植物の亜鉛恒常性維持に寄与するペプチドと受容体の機能解明
Project/Area Number |
19K05758
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
深尾 陽一朗 立命館大学, 生命科学部, 教授 (80432590)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 亜鉛欠乏 / ペプチド / シロイヌナズナ / 受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、シロイヌナズナの根において亜鉛欠乏特異的に発現量が上昇するDefensin-like (DEFL) proteinが相互作用する受容体タンパク質の探索と、その機能解析を目的とする。研究対象とする7種類のうち3種類のDEFLは、亜鉛欠乏時にタンパク質発現が上昇し、質量分析計で同定されるほど発現量が多いが、論文等での報告がない機能未知ペプチドである。また7種類のDEFLはシグナルペプチドと予想される配列をN末端側にもち、この領域が切断されたペプチドは6~8箇所のシステインが高度に保存されている。またリアルタイムPCRの結果からは、7種類のうち5種類は亜鉛欠乏に応答して発現量が上昇し、特に根において強く発現することが示された。残り2種類は亜鉛欠乏応答せず、地上部での発現が高かった事から、配列保存性は高いものの、異なる機能を有していることが示唆された。次に、これらDEFLの変異体や過剰発現体を用いた表現型解析から、2種類のDEFL(P2とP4)の二重変異体が亜鉛欠乏耐性を示したことに加え、さまざまな元素欠乏や亜鉛十分条件においても根が長くなる表現型を示した。この表現型の原因を調べたところ、少なくとも通常培地上では分裂領域の根の細胞数が増えることで根が野生型Col-0よりも伸長する事が明らかとなった。また亜鉛欠乏に応答して発現量が上昇するロイシンリッチリピート型受容体キナーゼなどの遺伝子の変異体についてホモラインの固定し、その表現型を調べたが、亜鉛欠乏に対する表現型はまったく見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
シロイヌナズナゲノム上においてDEFLと予測される284種類の遺伝子を取得し、系統樹を作成したところ、研究対象としている7種類のDEFLはファミリーを形成しており、さらにLUREやPDFといった既知のDEFLとは保存性が低いことが示された。また、7種類のDEFLのうち主に根で発現し、亜鉛欠乏応答する5種類のT-DNA挿入ホモ変異体を取得し、主に葉で発現し亜鉛欠乏応答しない2種類はゲノム編集により機能欠損した二重変異体を得ることができたが、いずれも亜鉛欠乏に対する表現型は示されなかった。昨年度得られたP2とP4ペプチドの二重変異体が亜鉛欠乏耐性を示した原因を再度詳細に調べたところ、少なくとも通常培地で生育した根の伸長領域では、Col-0と比較して二重変異体の細胞数が有意に増加する事で根の伸長が促進されることが示唆された。またP2ペプチドの自己プロモータによって制御されたP2-GFPシロイヌナズナ形質転換体(Col-0背景)では、根の細胞膜に局在する事が示された。これらの結果を論文投稿し、現在は改訂を行っている。なお、P4ペプチドのプロモータ領域のクローニングは難航し、最終的に700bp程度のプロモータ領域によってP4-GFPシロイヌナズナ形質転換体(Col-0背景)を作成できたが、GFP蛍光を確認することはできなかった。またp2p4二重変異体に対して自己プロモータを含むP2遺伝子および自己プロモータによって制御されたP2-GFPを形質転換した植物を作成した。この他、ロイシンリッチリピート型受容体キナーゼなどのT-DNA挿入変異体を7種類解析したが、いずれも亜鉛欠乏に対する表現型は示さなかったことから、現時点でも相互作用タンパク質の同定には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
p2p4二重変異体に対して自己プロモータを含むP2遺伝子を導入した相補ラインを用いた表現型解析を行い、二重変異体の根の長さが長くなる表現型の原因がP2およびP4であることを示す。またプレートで生育した植物を用いて元素解析を行った結果では野生型と変異体の間で元素濃度に違いはなかったものの、プレート内の湿度は100%に近く、特に地上部への元素の取込を十分に検討できていない可能性があることから、水耕栽培によって長期生育を行い、元素解析を行う。GFP蛍光観察からP2の局在は細胞膜である事が示されたが、細胞外局在の可能性がないことを確認するために、P2-GFPシロイヌナズナ形質転換体(p2p4二重変異体背景)を用いてGFP蛍光を観察する。またCol-0、p2変異体、p4変異体、p2p4二重変異体、P2-GFP形質転換体から細胞膜を単離し、P2抗体およびGFP抗体を用いてP2-GFPが細胞膜局在である事を確認する。さらに、P2は根における発現が高いことが示されているが、根における発現部位をより詳細に調べるために、P2プロモータGUS植物を用いた観察を行う。また比較的高濃度の細胞膜画分を得る方法を確立したことから、P2-GFP形質転換体を用いた免疫沈降実験を行い、相互作用タンパク質の同定を行う。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により実験が停止していた期間があることから満額を使用しなかった。次年度は、論文改訂のための実験および相互作用タンパク質の同定を中心に実施する。
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