2019 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子発現制御機構におけるシスエレメント機能の論理解析
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19K05766
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
兒島 孝明 名古屋大学, 生命農学研究科, 講師 (40509080)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井原 邦夫 名古屋大学, 遺伝子実験施設, 准教授 (90223297)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Aspergillus oryzae / 転写因子 / バイオインフォマティクス / 合成生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
Aspergillus oryzaeにおける転写因子による発現制御機構の解明と、A. oryzaeによる標的有用物質の高効率生産を目的として、以下のアプローチを実施した。 1) A. oryzae転写因子結合部位の網羅的同定 Zn2Cys6型の2種類の転写因子(TrsA:菌核形成に関与、KojR:コウジ酸合成に関与)についてgSELEX-Seqを実施し、これら転写因子のゲノム上の結合部位を網羅的に同定した。 2) A. oryzae CRISPR/CAS9法による標的転写因子欠損株の構築 ゲノム上のkojR領域を標的部位としたCRISPR/CAS9を実施し、3種類のkojR欠損株を取得した。これにより、CRISPR/CAS9法による転写因子欠損株の取得->転写因子欠損株を用いたRNA-Seq-> 転写因子の発現依存的な発現変動遺伝子の同定、の手順をgSELEX-Seqとパラレルで実施する、転写因子の制御機構の拡張型解析パイプラインが確立された。 3) A. oryzaeプロモーター機能の論理解析 キシラン・セルロースやペントース代謝などに関与する転写因子AoXlnRの転写制御情報をもとに各制御遺伝子の結合DNA領域付近の配列を比較し、配列環境が転写制御に与える影響を網羅的に解析し、機械学習を用いてAoXlnRによる配列毎の発現制御を予測するモデルを構築した。これらによって構築したいくつかのモデルにおいて、約70%の予測精度が得られた。さらに、このモデル構築の過程で、結合DNAモチーフの約20下流領域に位置するDNA配列が、AoXlnR依存的な発現変動に大きく寄与している可能性が示唆された。この成果に関して、国際会議を含む学会発表を4件を行い、現在論文作成中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
gSELEXにおけるKojR結合反応の最適条件の検討や、A. oryzae CRISPR/CAS9法の導入と確立にある程度の時間を要したことが挙げられる。また、無細胞タンパク質合成系を用いた転写因子を簡便に調製するワークフローを確立する必要がある。一方で、A. oryzae CRISPR/CAS9法の本研究への導入に加え、従来のNGSに比べて遥かに迅速かつ簡便にシーケンスデータの取得を可能とするNanoporeによる解析の実装に成功したことから、転写因子結合部位の網羅的同定、ならびにRNA-Seqによる発現変動遺伝子同定がより効率化され、今後、本研究課題の進行を加速できると期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、転写因子の複合体化を促進するGSTを始めとする種々のタグを介して転写因子複合体を簡便に調製する手法を確立しつつある。これを用いることで従来のアプローチでは困難でしたて複合体化された転写因子の結合部位の網羅的同定が可能となることから、本研究の今後の飛躍的な進展を期待している。また、プロモーター機能の論理解析モデルに関して、現時点では転写因子AoXlnRが関与するプロモーターに特化したモデルであるが、他の転写因子の結合部位や発現変動遺伝子の情報を組み込み、このモデルの汎用化を行う。これにより、麹菌における未知の転写制御機構の解明を試みる。
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Causes of Carryover |
gSELEXによる転写因子結合部位の解析条件の検討に当初の想定以上の期間を要し、研究遂行計画に遅れが生じたため。また、新型コロナウイルスの影響による学会の中止(日本農芸化学会2020年度大会[福岡])や、試薬配送の遅延なども理由として挙げられる。差額分は、研究遂行に関して今後一層の進展を図り、それにともなう消耗品購入に用いる。
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