2019 Fiscal Year Research-status Report
部位特異的遺伝子増幅機能を応用した放線菌二次代謝産物生産能力増強システムの構築
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19K05779
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
小松 護 北里大学, 感染制御科学府, 講師 (40414057)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 放線菌 / 物質生産 / 遺伝子増幅 |
Outline of Annual Research Achievements |
放線菌Streptomyces avermitilisのゲノム縮小株(SUKA)における、Kanamycin生産菌S. kanamyceticusならびにStreptomyces sp. RM04由来のZouAの部位特異的遺伝子増幅機能を応用した二次代謝産物生産能力増強システムを構築する。S. kanamyceticus由来のzouA_kanをRsB-attBs-RsA-zouA_kan (attBsは5種の溶原化ファージのattBを配列した領域であり、部位特異的組込型ベクターの組込みに利用する)の並びでカセット化し、線状プラスミドベクターSAP1に導入した(SAP1.15)。約30 kbのchloramphenicol(Cml)生合成遺伝子を含むpCML2をSAP1.15上のattBサイトに導入した。pCML2の選択マーカーであるapramycin耐性遺伝子を利用し、培地中のapramycin濃度を段階的に低濃度から高濃度に添加量を増やし、高濃度のapramycinに対して耐性を示す株を液体培養によって集積した結果、Cmlクラスターがタンデムに増幅して巨大化したと推測されるSAP1.15が観察されたが、増幅されたDNAを含むSAP1.15の存在比は極めて低かった。しかしながら、Cmlの生産量はzouA非導入株の2倍程度(0.4g/L)まで増加した。一方で、RM04株からクローン化したzouA_RM04の場合では、pCML2をSAP1ベクター上への導入のみで、効率良く(構成的に)cmlが増幅された。各zouAのRsAの周辺配列を含むプロモーター領域を比較した結果、両者のプロモーター領域は比較的高度に保存されていた。そこで、zouA_kanのプロモーター領域をzouA_RM04のプロモーター領域と交換した結果、zouA_kanにおいても構成的な遺伝子増幅が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
S. kanamyceticusおよびStreptomyces sp. RM04株由来のzouAの遺伝子およびその遺伝子産物のアミノ酸の一次配列は極めて相同性が高い。同様に、両遺伝子上流のプロモーター配列に関しても、翻訳開始点から上流約300bpに渡り、比較的相同性が高く、部分的なミスマッチやギャップ構造が存在していたが、転写効率に関しては同様であると推測された。しかしながら、S. kanamyceticus由来のzouAを利用した遺伝子増幅効果は、導入した遺伝子クラスターを含むプラスミドベクター上の薬剤耐性遺伝子に対応した抗生物質の高濃度存在下における集積培養によって初めて観察された。一方で、Streptomyces sp. RM04株由来のzouAを用いた場合では、高濃度抗生物質添加下での集積培養無しでも、構成的な遺伝子増幅効果が観察された。プロモーター置換によるzouA_RM04プロモーター制御下でのzouA_kanの発現解析の結果、野生型とは異なり、RM04株由来のzouA発現下での解析と同様の増幅効果が観察されたことから、プロモーター領域の置換によって、発現様式を効率化できる可能性がある事が明らかとなった。これまで、S.kanamyceticus由来のzouAのみが知られていたが、RM04株由来の配列を新たに見言い出したことにより、種間での発現用式の違いが明らかとなった。このことから、今後、異なるプロモーター配列を用いることによって、さらに発現の効率化を実現できる可能性があり、当初より予定していた次年度計画を遂行することが出来る。
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Strategy for Future Research Activity |
RM04株由来のzouAの導入によって、構成的な遺伝子増幅が観察された。更に効率の良い増幅を期待して、種々の誘導型ならびに構成的発現プロモーターを利用した発現検討を行う。構成的発現プロモーターとして、S. avermitilis内在性のリボソームタンパク(RpsL)をコードする遺伝子上流のプロモーター配列を利用することによって、生育初期からの発現を試みる。また、誘導的発現プロモーターとしてCumate(p-isopropylbenzoic acid)を誘導基質とした、超厳密誘導型プロモーター(P21-cmt-CymRシステム)を用いる(Appl.Microbiol. Biotechnol.,98:8641,2014)。培養過程の種々のタイミングでcumateを添加することによって詳細な条件検討を行う。各発現ベクターは不安定性プラスミドであるpGM160を用いて構築する。発現誘導後、抗生物質無添加培地で培養することで容易に脱落する。 さらに、種々の異種微生物由来の二次代謝産物について物質生産性の検討を行う。特にポリケチド化合物(Ⅰ型PKS)や非リボソームペプチド化合物(NRPS)合成酵素遺伝子の様に、遺伝子内に相同性の高いドメインを有し、100 kb超にもおよぶ巨大遺伝子クラスターについて検討を行う。タンデムに増幅した遺伝子領域は互いに相同であるため、相同的組換えによって欠失や転座等、ゲノム上でリアレンジメントが生じる可能性が有るため、パルスフィールド電気泳動等を用いて安定性と生産性について調べる。
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Research Products
(2 results)