2020 Fiscal Year Research-status Report
部位特異的遺伝子増幅機能を応用した放線菌二次代謝産物生産能力増強システムの構築
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19K05779
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
小松 護 北里大学, 感染制御科学府, 講師 (40414057)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 放線菌 / 遺伝子増幅 / 物質生産 / 二次代謝産物 / 線状プラスミド |
Outline of Annual Research Achievements |
放線菌Streptomyces avermitilisのゲノム縮小株(SUKA)における、S.kanamyceticusならびにStreptomyces sp. RM04由来のZouAの部位特異的遺伝子増幅機能を応用した二次代謝産物生産能力増強システムを構築する。前年度の研究結果より、線状プラスミドSAP1上にRM04株由来のzouAを導入することによって、導入した遺伝子領域の構成的な増幅が観察された。更に効率の良い遺伝子増幅を期待して、種々の誘導型ならびに構成的発現プロモーターを利用した発現検討を行った。構成的発現プロモーターとして、S. avermitilis内在性のリボソームタンパク(RpsL)をコードする遺伝子上流のプロモーター配列をzouAの上流に連結し、生育初期からの構成的発現を試みた。その結果、指標として用いたクロラムフェニコール生合成遺伝子を保持するpCML2の増幅は観察されなかった。また、Cumate(p-isopropylbenzoic acid)を誘導基質とした、誘導型プロモーター(Pcmt:P21-cmt-CymRシステム)を用いた結果、cumate添加の有無にかかわらず、効率の良いpCML2の増幅が確認された。しかしながら、その増幅効果は、RM04株由来のRsA配列並びにその周辺領域を導入した場合にのみ観察された。RM04株由来の野生型プロモーターを利用した当初の結果と比較しても、顕著な増幅効果が見られたことから、今後はPcmtを利用することによって、効率の良い遺伝子増幅が期待できる。また、パルスフィールド電気泳動の結果、増幅された遺伝子領域は欠失することなく安定的に保持されており、観察できる限り、11コピーまで増幅されていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた二年次の計画通り、ZouAの発現に効果的なプロモーター(Pcmt)を選択することができた。しかしながら、cumateを基質とした厳密な誘導型発現プロモーターとして期待していたPcmtにおいて、SUKA株では同時に導入したリプレッサータンパクであるcymRの制御が効いておらず、cumate添加の有無にかかわらず、構成的なZouAの発現が観察された。予想外の結果ではあったが、パルスフィールド電気泳動による観察から、増幅された遺伝子領域が安定して線状プラスミドであるSAP1上に保持されていることが確認された。このことから、今後はPcmtを利用することによって、効率の良い遺伝子増幅が期待できることが判明した。現在、クロラムフェニコール生合成遺伝子を保持する全長約35 kbのpCML2を指標としてZouAの効果を調べているが、ポリケチド化合物(Ⅰ型PKS)や非リボソームペプチド化合物(NRPS)合成酵素遺伝子の様に、遺伝子内に相同性の高いドメインを有し、100 kb超にもおよぶ巨大遺伝子クラスターについて適用することができるかどうか検討する必要がある。また、ゲノム上で同様の効果を得られれば、さらに安定して増幅された遺伝子領域が保持できる可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
Pcmtを構成的発現プロモーターとして用いることによって、線状プラスミドSAP1上に導入した遺伝子領域の安定的な増幅が確認できたことから、ポリケチド化合物(Ⅰ型PKS)や非リボソームペプチド化合物(NRPS)合成酵素遺伝子の様に、遺伝子内に相同性の高いドメインを有し、100 kb超にもおよぶ巨大遺伝子クラスターについても適用することができるかどうか検討する。その後、導入した遺伝子領域の増幅によって異種微生物由来の二次代謝産物の生産性が向上するかどうか調べる。また、染色体上に導入した場合のトポロジー変化によって物質生産に影響があるかどうか調べる。
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Research Products
(2 results)