2020 Fiscal Year Research-status Report
大腸菌の形質転換におけるDNA取り込みメカニズムの解明
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19K05782
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
野崎 晋五 立教大学, 理学部, 助教 (70725481)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 大腸菌 / 形質転換 / トランスフォーメーション / DNA導入 |
Outline of Annual Research Achievements |
大腸菌の形質転換において外膜タンパク質であるOmpAが重要な役割を果たしていることが明らかになってきた。そこで、形質転換効率を向上させた大腸菌株を作製する目的でOmpA過剰発現株の構築を試みた。まず、マルチコピープラスミドからOmpAを過剰発現させた場合では、コンピテントセル作製時に大腸菌が溶菌してしまい、形質転換を行うことが困難であった。OmpAの発現はsmall RNAであるmicA及びrseXにより負に制御されていることが知られている。そこで、これらのsmall RNAをコードするDNA配列をゲノムから欠失させた変異株の作製を行った。このsmall RNA破壊株では形質転換効率の向上が見られた。この菌株を用いることでより効率の良い形質転換が期待される。 また、DNAの取り込みに関して、ファージの感染時にDNAを注入する経路が、形質転換時のDNA取り込み経路とオーバーラップする可能性を検討した。その過程において、ライゲーションを用いず、エキソヌクレアーゼ処理による末端一本鎖DNAの露出後にアニーリングのみにより連結した複数PCR断片をインビトロパッケージングによりファージキャプシドに取り込ませることができ、さらに細胞内に導入することが可能であることを見出した。これにより合計50kb程度の複数のPCR産物を簡便に連結し、大腸菌内へと導入することが可能となった。 これまでの形質転換法の研究により、1.5 mLチューブ内で培養した大腸菌からコンピテントセルを作製することが可能であった。この方法をさらに簡便化することを試みた。その結果、0.2 mLチューブ内のわずか50μLの大腸菌培養液からコンピテントセルの作製が可能であることを見出した。この方法により、PCRチューブや96-well プレート内で簡便にDNA導入可能となることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ファージのインビトロパッケージングシステムを用いる方法により、合計50kb程度までの複数のPCR断片を連結して一度に大腸菌細胞内に導入することができるようになった。また、PCRチューブ内で培養した微量の大腸菌培養液を用いて、簡便にコンピテントセルを作製することが可能であることが明らかとなった。これらの成果は新規のDNA導入技術につながり、大腸菌を用いたDNA操作をより簡便かつ低コストで行うことが可能となる。これにより、基礎から応用までのDNAを扱う研究を加速させることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究により、わずか50μLの大腸菌培養液を用いてコンピテントセルを非常に簡便に作製することが可能であることが明らかとなってきた。今後はこの微量培養液からの簡便かつ効率の良い形質転換法の確立を目指す。具体的には、培地の組成、培養方法、形質転換操作等の条件検討を行うことで簡便性及び効率を向上させる。これにより、これまでにない新たな大腸菌形質転換法の整備を行い、大腸菌をあたかも試薬のような感覚で扱ってDNAの導入や細胞内DNAアセンブリー反応を行えるようにする予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により緊急事態宣言が発令され、研究を進められない時期があった。今年度の研究により微量培養液を用いた新たな形質転換法につながる知見が得られたため、次年度使用額をその新規形質転換法の条件検討を含む詳細な解析研究に充てる予定である。また、当初の予定通り、得られた成果について発表を行うためのデータ収集を行い、学会発表及びに論文投稿を行う予定である。
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Research Products
(1 results)