2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K05788
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
竹野 誠記 信州大学, 学術研究院農学系, 准教授 (30422702)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 正人 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (00377649)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | コリネバクテリウム グルタミカム / パルミトレイン酸 / パルミチン酸 / 脂肪酸生合成 / 脂肪酸不飽和化酵素 / 応用微生物 / 発酵 / 代謝工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
機能性脂肪酸として注目を集めているパルミトレイン酸(Pol)は,現在,植物資源から抽出することで製造されているのが現状で,発酵生産は未だ行われていない。我々は,産業微生物であるCorynebacterium glutamicum(コリネ菌)では初めてとなる脂肪酸高生産菌を育種してきた。この生産菌は,有用脂肪酸の有効な生産宿主としてのポテンシャルを有するものの,商品価値に乏しい脂肪酸種しか生産しない。しかし,この脂肪酸を付加価値の高い脂肪酸に転換できれば産業的な価値が生じる。本研究の目的は,コリネ菌の脂肪酸高生産菌を宿主に,糖から直接Polを生産できる菌株を育種することである。なお,本研究を開始する時点で,上述の脂肪酸高生産菌からパルミチン酸(Pal)だけを高生産する菌株を構築していた(Pal単独生産菌)。令和元年度は,PalをPolに変換する代謝系を成立させる目的で,この変換を行いうる脂肪酸不飽和化酵素の遺伝子を他菌種から単離してPal単独生産菌に導入した(導入株)。目的の代謝系が成立した場合,宿主本来のPol要求性は消失するはずであるが,導入するだけでは要求性は消失しなかった。しかし,導入株からPol非要求性となった変異株を取得するに至り,解析の結果,この変異株がごく微量ながらPolを生産していることが判明した。続いて,変異株の全ゲノム解析を行い,Pol生産の原因変異を同定した。その結果は,鉄の利用効率を高めることが,我々のPol生産菌の育種戦略において重要であることを示唆するものとなった。この知見に基づいて,令和2年度は,培地に添加される鉄源についての検討を行い,通常の鉄源に加えて鉄をヘミンの形態でさらに添加すると,変異株によるPol生産の変換率(Pol / Pal + Pol)が高められる可能性を示す結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究実施計画では,導入株から複数のPol非要求性変異株を取得し,それらが有する有効変異をゲノム解析ならびに元株への再導入試験にて同定することを目標としていたが,これを令和元年度に完了することができた。また,令和2年度に実施した鉄源の検討から,変異株において,申請当初の目標である50%の変換率を導く可能性のある条件を一つ得ることができた。これらから,おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の変換率の向上を目的に,変異株が有するPalをPolに変換する代謝系を強化する。具体的には発現の強化である。また,鉄源も含めて培養条件を広く検討し,生産性および変換効率の向上を図る。
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