2020 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of mechanisms for high-temperature resistance of super thermotolerant wild yeasts and its application to fermentation biotechnology
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19K05790
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
杉山 峰崇 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (80379130)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 酵母 / Saccharomyces cerevisiae / Pichia kudriavzevii / 高温ストレス / SOD |
Outline of Annual Research Achievements |
高温耐性野生酵母SPY3の高温耐性と関連が高いとして抽出された脂質合成関連遺伝子群についてパスウェイ解析を行い、律速段階となる幾つかの遺伝子を抽出した。そして、それらの遺伝子破壊を行いSPY3の高温耐性を解析した。その結果、それらの遺伝子破壊株はSPY3と同程度の高い高温耐性を示したことから、想定している脂質物質よりさらに前段階で合成される脂質前駆体が高温耐性に寄与していることが示唆された。SPY3の高温耐性に寄与することが明らかとなった転写因子は高温条件下で、高温感受性株よりもSPY3の方で核局在率が顕著に高く、この転写因子によって制御を受ける下流遺伝子の発現が高温耐性獲得に貢献していることが強く示唆された。そこで、この転写因子の推定結合DNAモチーフを用いて発現制御を受けると予想される下流遺伝子の抽出を行い、抽出された下流遺伝子の発現レベルを解析した。その結果、高温条件下でこの転写因子依存的に高発現する遺伝子を1つ見出した。そしてこの遺伝子破壊株を作成したところ、高温条件下で顕著にSPY3の高温耐性能力を低下させたことから、この遺伝子がSPY3に特異的な優れた高温耐性の獲得に重要であることを明らかにした。 優れた高温耐性を示す酵母Pichia kudriavzevii N77-4において、高温ストレス条件下で生じるROSストレスを除去する酵素遺伝子SODの同定とその機能解析を進めた。ドラフトゲノム解析の結果、2つのSOD遺伝子を初めて見出した。両遺伝子破壊株を構築したところ、ROSが顕著に蓄積し、増殖速度も低下した。さらに、ストレス条件下では、そのうちの1つが顕著に発現誘導を受けることも見出したことから、P. kudriavzeviiはSODの発現誘導を通じてROSストレスに適応していることを明らかにした。 これら2つの酵母株の成果を日本分子生物学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、新型コロナ感染症の拡大により年度当初から大学での2ヶ月間の一斉休業やその後の断続的な大学内での活動制限によって、当初予定していた研究計画の実施が困難となった。まず、優れた高温耐性を示す酵母Ogataea polymorpha NCYC495の解析については、RNAseq解析から高温条件下で高発現している遺伝子を抽出し、高温耐性に関与する新規遺伝子を1つ見出している。本年度はこの遺伝子産物の細胞内局在や細胞機能について検討した。しかし、コロナ禍による学生の研究時間規制や技術的なトラブルにより解析を続けている途中である。当初計画していたプロテオーム解析についても学生や共同研究先の研究時間が確保できず断念した。また、投稿していた論文についても、追加実験を行う人員や研究時間が確保できず受理にまで至らなかった。しかし、こうした状況下の中でも、日本分子生物学会での2名のポスター発表の成果に結びつけることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
高温耐性野生酵母SPY3の高温耐性メカニズム解析については、SPY3の優れた高温耐性に関与することを独自に見出した転写因子の詳細な機能解析を進め、生命科学およびバイオテクノロジー研究に役立つ新規の知見が得られるよう研究・開発を進める。優れた高温耐性を示す酵母O. polymorpha NCYC495の高温耐性メカニズム解析については、新型コロナ感染症の再拡大による大学内での活動制限や申請者の大学異動による研究室の新規立ち上げなどの事情により、可能な範囲で進める。優れた高温耐性を示す酵母Pichia kudriavzevii N77-4の機能解析については、追加実験を行う人員と研究時間を確保し、発酵産業に役立つ知見の取得を進める。
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Causes of Carryover |
今年度は、新型コロナ感染症の拡大により年度当初から大学での2ヶ月間の一斉休業やその後の断続的な大学内での活動制限によって、当初予定していた研究計画の多くが実施困難となり、さらに学会発表もオンラインとなったため、次年度使用額が生じた。翌年度の助成金の使用計画としては、当分の間、ある程度の活動制限が続くと予想されることから、状況を見ながら研究計画を練り直し実施項目をシンプルにして成果を取りまとめることに主眼において、可能な限り遅れを取り戻すべく研究を進め、翌年度助成金の執行に努める。
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