2020 Fiscal Year Research-status Report
有機溶媒耐性コクリア属細菌の分子育種および有用物質生産への展開
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19K05795
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
戸田 弘 富山県立大学, 工学部, 講師 (60608321)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 有機溶媒耐性微生物 / Kocuria rhizophila / 物質生産 / ゲノム編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)有機溶媒耐性菌Kocuria rhisozphila DC2201の有機溶媒耐性機構を明らかにするために、RNAシーケンスによる網羅的転写解析を行った。その結果、10%ジメチルホルムアミド曝露条件下において、各種トランスポーターや分子シャペロンに加えて、機能未知な多数の糖転移酵素において転写量が優位に上昇することが明らかになっている(R1年度報告)。これらの糖転移酵素が、K. rhizophila DC2201の菌体外多糖類合成に関与していることが推測されたことから、その遺伝子破壊を試みた。その結果、マンノース転移酵素と高い相動性を有する遺伝子を破壊したときに、野生株と比較して優位にジメチルホルムアミド耐性が低下することが明らかになった。また、野生株にマンノースを炭素源として添加して培養したとき、有機溶媒-水二相系反応によるスチレンオキシド生産量が優位に増加すること、また反応時の菌体生存率が上昇することが明らかとなった。これらのことからK. rhizophila DC2201の有機溶媒耐性に菌体外多糖が関与すること、またマンノースが構成成分として重要であることが示唆された。現在この多糖類の詳細な構造解析などを進めている。 2)糖代謝速度に関与するグローバルレギュレーターを決定するため、Corynebacteriumなどで報告されているglxR, gntR, sugR などと高い相同性を示す遺伝子の特定を行った。このうちgntRと思われる遺伝子の破壊株を作成し、その生育速度への影響を検討したが優位な差はみられなかった。また、解糖系酵素の活性についても、優位な変化が見られなかった。現在たのレギュレーター候補遺伝子についても順次破壊株の作成と評価を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
糖代謝関連グローバルレギュレーター候補遺伝子の破壊株の評価を行ったが、優位な変化を示す候補遺伝子が得られなかった。Corynebacteriumなどで報告されているレギュレーター遺伝子でK. rhizophila 内に存在しないものも多数あり、未知のレギュレーターの存在も示唆される。現在他の候補遺伝子の破壊と評価を進行中である。 カロテノイド合成系遺伝子については、Paracoccus 由来CrtWZY遺伝子及びK. rosea 由来CrtO遺伝子などをクローニングし、構築したシャトルベクターを用いた発現実験を行っている。また、アスタキサンチン合成能を向上させるため、K. rhizophila DC2201 に内在するCrtEbYfオペロンを破壊するためのプラスミドを構築しゲノム破壊を行った。破壊株において菌体のコロニーが優位にオレンジ~橙色に変化したことから、リコピンの蓄積が起こっていると推測される。現在破壊株におけるリコピン生成能を検討中である。本破壊株が完成後、シャトルベクターを用いてCrtWZY遺伝子の導入を行い、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、クリプトキサンチンなどのカロテノイド合成能を評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
1)引き続き、糖代謝関連グローバルレギュレーター候補遺伝子の探索、破壊、機能評価を進める。解糖系遺伝子の発現上昇および糖代謝速度の向上に関与する遺伝子を特定後、補酵素再生系に関与する遺伝子の発現強化を行う。また、フェニルアラニンやトリプトファンといった芳香族アミノ酸の生成量を強化するための遺伝子破壊及び発現増強株の作成を行い、芳香族化合物生産能力を向上した株を作成する。これらの株に外来のスチレンモノオキシゲナーゼ(SMO)やハロヒドリンデハロゲナーゼ(Hhe)を導入することで、ワンポットでキラルアルコールなどを合成可能なバイオプロセスの構築を試みる。 2)カロテノイド合成遺伝子の導入及びアスタキサンチン合成バイオプロセスの評価を行う。
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Causes of Carryover |
グローバルレギュレーター候補遺伝子の破壊株のメタボローム解析を行う予定であったが、優位な候補破壊株を取得できていないことから委託解析が未発注である。R3年度に発注予定である。
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Research Products
(2 results)