2019 Fiscal Year Research-status Report
テルペノイドと油脂を高生産する海藻(褐藻)バイオリファイナリー
Project/Area Number |
19K05796
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Research Institution | Ishikawa Prefectural University |
Principal Investigator |
河井 重幸 石川県立大学, 生物資源環境学部, 教授 (00303909)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 渉 京都大学, 農学研究科, 教授 (30273519)
三沢 典彦 石川県立大学, 生物資源環境学部, 教授 (30393466)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 油脂蓄積酵母 / HMG-CoAレダクターゼ / テルペノイド / バレリアノール / 褐藻 / アルギン酸 / 油脂 / ゲノム編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、①油脂蓄積酵母(Yarrowoa lipolytica: Yli酵母)におけるHMG-CoAレダクターゼ(Yli酵母Hmg1)のリン酸化による活性制御機序を解明すること、②同機序に基づいてテルペノイド合成系を強化し、更には油脂合成経路の弱化でテルペノイド合成経路を更に強化し、バレリアノール(テルペノイドの一つ:本研究のターゲット)を高生産するYli酵母を構築すること、および③同酵母およびYli酵母(親株)へアルギン酸と硝酸塩の資化能を付与し、アルギン酸と硝酸塩からバレリアノールを高生産するYli酵母と油脂を高生産するYli酵母を構築することである。 当該年度は、①②に関しては、まずはYli酵母Hmg1の推定リン酸化部位(Ser-973とThr-977)を各々Alaに置換したHmg1_TA(Ala置換により細胞内でリン酸化されなくなると予想)ならびにYli酵母Hmg1を発現させるプラスミドを構築し、これらをコントロール(ベクター)とともにバレリアノール生産Yli酵母(当該年度に構築)に導入した。また、油脂合成経路の弱化による方法でもバレリアノールの高生産を試みるため、ターゲット遺伝子(Yli酵母ではylAcc1)の上流域をターゲットとするSTEPS(Systematically Test Enzyme Perturbation)法のプラスミドを構築し、上記バレリアノール生産Yli酵母に導入した。これらは、目的①②(いずれも成功すれば画期的)達成のために不可欠である点に意義がある。 ③に関しては、コドンをYli酵母型に最適化した4遺伝子をYli酵母に導入完了し、導入株のDEH(アルギン酸分解物)での生育と油脂の蓄積を確認した。Yli酵母へのDEH資化能の導入および同酵母を用いたDEHからの油脂の生産は、初めての事例である点に意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①②に関しては、バレリアノール合成酵素(Yli酵母に最適化)をゲノム編集で組み込んだYli酵母(バレリアノール生産Yli酵母)を構築し、バレリアノール生産をGC-MSで実証した点、さらに同酵母に推定リン酸化部位(Ser-973とThr-977)を各々Alaに置換したHmg1_TAならびにYli酵母Hmg1を発現させるプラスミドを構築し、バレリアノール生産Yli酵母への導入まで完了した点、STEPS(Systematically Test Enzyme Perturbation)法に不可欠な、ターゲット遺伝子(Yli酵母ではylAcc1)の上流域(-550、-422、-135、+10:開始コドンを+1として)をターゲットとするプラスミドを構築できた点を鑑みてかかる評価とした。 ③に関しては、Yli酵母型に最適化した4遺伝子(DEH輸送体、DEHレダクターゼ、KDGキナーゼ、KDPGアルドラーゼ)各遺伝子をYli酵母に導入完了し、導入株のDEH(アルギン酸分解物)での生育の確認とナイルレッド染色による蛍光顕微鏡観察による油脂の蓄積の確認まで完了した点を鑑み、かかる評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
①②に関して、Hmg1_TAを用いた研究ならびにSTEPS法を用いた研究ともに、当該年度構築した導入株のバレリアノールおよび中間体のメバロン酸の生産を各々GC-MSとHPLCで評価し、Alaへの置換やSTEPS法がバレリアノールおよびメバロン酸生産に及ぼす影響をまずは調べる。STEPS法に関しては、同法が機能しているか(yliAcc1遺伝子の転写を位置依存的に抑制しているか)をqPCR法によりyliAcc1遺伝子の転写を測定することで明らかにする必要がある。 ③に関しては、ナイルレッド染色で染まった成分が油脂であること、およびその油脂の成分をGC-MSとGC等を用いて明らかにするとともに、構築したDEH資化Yli酵母のDEH代謝能の向上と油脂蓄積能の向上を図る。対照として、申請者らが構築済みのYli資化パン酵母を効果的に援用する。また、申請者らが明らかにしたDEHの化学特性(アミノ酸との反応性)の特性情報等も十分に援用する。
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Causes of Carryover |
当該助成金が生じた状況1:設置予定であった(1)遠心濃縮機と(2)LEDイルミネーターと(3)ブロッティング装置を設置しなかった。理由は(1)は別予算で設置された。(2)設置済みの同等品が故障寸前だが使用に耐えた。(3)は次年度以降に設置予定。 当該助成金が生じた状況2:新型コロナウイルスの影響で年度末の研究打ち合わせや学会発表ができなくなった。 翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画:(3)は設置予定。他は、特に物品費として油脂、バレリアノール、メバロン酸の分析や遺伝子操作に要する主に物品費として援用し、目的達成に万全を期す。
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Research Products
(5 results)