2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K05799
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
荻田 亮 大阪市立大学, 都市健康・スポーツ研究センター, 教授 (00244624)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村田 和加惠 米子工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (30613707)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 細胞寿命 / 長寿化 / 天然由来成分 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究においては、申請者らが新たに発見した梨幼果成分が発揮する酵母の寿命延伸効果に着目し、長寿化を引き起こす有効成分を同定するため、種々の抽出条件で梨成熟果および幼果に含まれる有効成分の解析を行った。 梨の成熟果および幼果をそれぞれ破砕し、蒸留水あるいは70% エタノールに懸濁した後、それぞれのサンプルを抽出し出芽酵母の経時寿命を測定し、有効性を評価した。また、RT-PCR 試験によって出芽酵母の mRNA の発現量を分析し、梨抽出成分による遺伝子レベルでの影響を評価した。 梨幼果の水抽出成分、およびエタノール抽出成分のいずれを付与した場合においても、コントロールと比べて経時寿命を著しく延長させる効果が認められた。さらに、RT-PCR によって mRNA の転写量について調べたところ、梨幼果の水抽出成分を付与したものでは、ヒト長寿遺伝子(SIRT1) の相同遺伝子とされているSIR2、およびSIR4の発現量に増加傾向が認められたが、エタノール抽出成分を加えたものでは、それら遺伝子の発現量に差は認められなかった。さらに、寿命延長および抗酸化への関与が報告されているSOD遺伝子、およびグルコース応答系であるSch9、Tor1経路に関わる遺伝子についてRT-PCR試験を行ったところ、水、エタノールのいずれの抽出成分においてもmRNAの転写量において有意な差がみられなかった。以上の結果から、梨の幼果成分における、水抽出成分およびエタノール抽出成分では、極性が異なる成分が、それぞれに異なる機序によって出芽酵母の寿命延長に関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時に予定していた研究執行計画を順調かつ確実に遂行させており、その結果も良好・明確である。 よって、「研究の目的」の達成度は、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度の結果を基に以下の方法によって長寿化を引き起こす成分の同定と、同成分による長寿化のメカニズムの解明を目指す。また、長寿化酵母において維持される代謝活性および発酵生産能を評価し、長寿化酵母を広く発酵生産の現場において応用するためのアイデアを提示する。 梨幼果の破砕液から各種クロマトグラフィーによって有効成分の同定を試みる。有効成分の分子構造に基づいて、長寿遺伝子の発現誘導との間に未知タンパク質の介在が推察される場合は、同タンパク質の単離・同定を試みるなど、長寿化に関与するタンパク質の解析をすすめる。 梨幼果抽出液の添加により転写量増大が確認されている遺伝子(Sir2、Sir4、Vhr1、Vhr2)変異株に対する長寿化効果を検証するなど、梨幼果および同定された長寿化成分の酵母遺伝子への影響を解析する。 産業用酵母をモデルとして、梨幼果および有効成分による長寿化効果を検証する。さらに長寿化が認められた酵母を選択し、小スケール(実験室レベル)で発酵生産の量的評価を行い、長寿化酵母の発酵生産能の活用に向けた具体的方策を提示する。 他種産業(食品、バイオ医薬)に関連する酵母に対する長寿化効果および発酵生産能を評価し、多様な発酵生産技術への転化・実用化に向けた具体的方策を検討する。さらに、カビや放線菌などを利用する生産技術への応用と今後の連携研究体制について具体的方策を検討する。
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Causes of Carryover |
当初、初年度に購入を予定していた消耗品の一部について、研究計画の変更に伴い次年度に購入することとしたため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は当初購入を予定していた消耗品を次年度に購入することとして執行を計画している。
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Research Products
(8 results)