2021 Fiscal Year Research-status Report
油脂酵母を用いたオートファジーによる脂肪滴分解機構の解析と油脂高蓄積酵母の作出
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19K05801
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Research Institution | Nigata University of Phermacy and Applied Life Sciences |
Principal Investigator |
山崎 晴丈 新潟薬科大学, 応用生命科学部, 助教 (20456776)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Lipomyces starkeyi / 油脂酵母 / トリアシルグリセロール / 脂肪滴 / オートファジー |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までにオートファゴソームの形成に必須であるAtg2をコードする遺伝子ATG2の欠失株(Δatg2)を作製し,油脂を蓄積しやすいS5%培地での油脂蓄積を評価した。その結果,Δatg2が野生型株に比べて細胞あたりのTAG(トリアシルグリセロール)を多く蓄積していることを見出していた。しかしΔatg2は培養後期には野生型株よりもROSを蓄積し,生菌率が大幅に下がることも見出した。さらにΔatg2は生菌率が大幅に下がる時期から培養上清にTAGを漏出していることを示唆する結果も得られていた。 本年度はATG2の他にマクロオートファジーに関与するAtg15, Pep4をコードする遺伝子の破壊株Δatg15, Δpep4を作製した。Atg15, Pep4はそれぞれ液胞内のリパーゼ,プロテアーゼであり,両因子ともにマクロオートファジーにおけるオートファジックボディの液胞内分解に必須の役割を果たしていると考えられている。そのため,Δatg15, Δpep4でも野生型株に比べて細胞あたりのTAG量が増加することが予想された。前年までと同様に,これらの株を油脂蓄積培地であるS5%培地で培養したところ,Δatg15, Δpep4の細胞あたりのTAG量は野生型株と同等であった。これらのことから,単純にオートファジーを阻害するとTAGの蓄積量が増加するわけではなく,オートファゴソームが形成されて液胞に融合まですれば,オートファジックボディ内のTAGは分解される可能性が考えられた。しかしながらオートファジックボディの分解は従来のオートファジーにおいては必須であることから,Atg2がオートファジー以外の未知の機能を持っており,それがTAGの分解に関与している可能性も考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
L. starkeyiにおいてはオートファジー関連遺伝子の中には破壊してもTAG蓄積に影響を与えないものが存在することが明らかになるなど,興味深い結果が得られてきている。しかし前年度に続きコロナ禍の影響で予定していたミクロオートファジー関連遺伝子の欠失株の作製ができなかったため,「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ミクロオートファジー関連遺伝子の欠失株として∆vps27を作製してそのTAG蓄積能を評価していく。またVph1-mCherry株を作製してその分解の程度を調べることで,ミクロオートファジーがどの時期に起こっているかを検討する。さらに液胞にある程度大きな脂肪滴がまるごと取り込まれる現象を観察していることから,それがおこる培養条件,関与する遺伝子について同定していく予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で予定していた実験ができなかったため次年度使用が生じた。今年度は破壊株の作製やタグ付き株の作製とその評価を行うための,分子生物学的,生化学的な試薬の購入に使用する。オートファジーが起こる培養条件の検討では,フィルター滅菌が必要であるため,そのフィルターの購入にも使用する。また成果を取りまとめて発表するためのPCを購入する。
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