2019 Fiscal Year Research-status Report
糸状菌における鉄ホメオスタシスのマスターレギュレータHapXの鉄感知の分子機構
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19K05802
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
加藤 雅士 名城大学, 農学部, 教授 (70242849)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
志水 元亨 名城大学, 農学部, 准教授 (20423535)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 鉄硫黄クラスター / 鉄のホメオスタシス / HapX / Aspergillus / 麹菌 / 転写因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
HapXは申請者らが初めて見出した真菌類に特異的な転写制御因子であり、広域転写因子 CCAAT-box 結合因子と相互作用し、鉄のホメオスタシスに重要な働きをしている。本研究では、モデル糸 状菌 Aspergillus nidulans を用い、以下の研究を遂行した。 1. C末端に存在する3つのシステインリッチ領域(CRR)への変異導入と鉄硫黄 (Fe/S) クラスタの結合能の影響:1)野生株および3ヶ所それぞれのCRR内の全てのシステイン残基をセリンに置換した変異リコンビナントHapXタンパク質の調製に成功した。スペクトルの解析をしたところ、HapXはFe/Sクラスタに特徴的な410 nmの吸収を示し、いずれのCCRもその吸収に関与することが明らかになった。現在、寄与率なども含め詳細な検討を進めている。2)各タンパク質に含まれる鉄の含有量の定量については、タンパク質の大量精製の条件を検討している段階である。 2. HapXに存在するCRRへ点変異を導入した株の生理学的解析:1)野生株および変異HapX株の鉄欠乏条件、鉄十分条件、鉄過剰条件での生育を調べるため、CRR内の全てのシステイン残基をセリンに置換した変異株を作成した。現在、生育差を見るための条件を検討している。2)鉄欠乏条件で抑制される遺伝子や鉄過剰条件で誘導される遺伝子について、各条件での各変異株の転写発現量をリアルタイムPCRにより定量するための実験条件を検討中である。 3. HapX変異株とFe/Sクラスタ生合成に関する変異株を利用した解析:ミトコンドリアの鉄輸送タンパク質遺伝子mrsAの欠失株の取得のための破壊カセットの作成を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
変異株の作成および変異タンパク質の取得に関して、当初の予定通り順調に計画は進行している。Fe/Sクラスタの形成にそれぞれのCRRが関与していることも生化学的、分光学的な手法で明らかになりつつあり、概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
計画に従い、1)CRRへの変異導入とFe/Sクラスタの結合能の影響:変異リコンビナントHapXタンパク質のスペクトルの解析を進め、HapX内に存在するFe/Sクラスタの数やクラスタのタイプなどの基礎的知見を収集する。2) HapXに存在するCRRへ点変異を導入した株の生理学的解析:野生株および変異HapX株を鉄欠乏条件、鉄十分条件、鉄過剰条件で生育を調べ、CRR内のシステイン残基と鉄欠乏および鉄過剰条件下における生育との関係を調べる。また、鉄欠乏条件で抑制される遺伝子や鉄過剰条件で誘導される遺伝子について、各条件での各変異株の転写発現量をリアルタイムPCRにより定量し、HapXのもつ遺伝子誘導機構および抑制機構に関する知見を収集する。3) HapX変異株とFe/Sクラスタ生合成に関する変異株を利用した解析:ミトコンドリアの鉄輸送タンパク質遺伝子mrsAの欠失株の取得を進める。
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Causes of Carryover |
ほぼ予定通りの執行となったが、当初予算より1,496円少ない支出となった。研究費をより有効に使用するために、次年度使用額に回し、研究試薬の購入に当てることとしたため。
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