2021 Fiscal Year Research-status Report
難培養性微生物の覚醒シグナルに応答する遺伝子の解明
Project/Area Number |
19K05804
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Research Institution | Yasuda Women's University |
Principal Investigator |
村上 千穂 安田女子大学, 薬学部, 助教 (50649077)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青井 議輝 広島大学, 統合生命科学研究科(先), 准教授 (40386636)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 難培養性微生物 / 亜硝酸酸化細菌 / Nitrospira / 休眠と覚醒 / RNA-seq / 覚醒シグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
難培養性微生物が休眠状態から覚醒する遺伝子発現の変化を RNA-seq によって網羅的に解析して覚醒シグナルに応答する遺伝子を明らかにする。RNA-seq解析により、難培養性微生物である亜硝酸酸化細菌の休眠状態, 増殖状態, 覚醒(増殖開始)状態の3状態の全遺伝子の遺伝子発現状態が明らかとなった。また、遺伝子発現量の差解析により、休眠状態と増殖状態の間に覚醒状態を示す状態があることを確認することができた。 以上により、3状態の遺伝子発現の変化が明らかとなった。その内、未知の覚醒シグナルに応答する遺伝子として、微生物が持つ普遍的な環境応答機構に着目した。具体的には、二成分制御系の構成成分の一つであり、シグナルを感知すると予想されるヒスチジンキナーゼに着目して解析した結果、3個の候補が得られた。ヒスチジンキナーゼは、膜結合型と細胞内在型があることから、膜貫通領域の有無を解析した。その結果、全て膜貫通領域をもつことが分かった。さらに、3個の遺伝子の内、1個が1回膜貫通型、2個が3回膜貫通型であることがわかった。また、ヒスチジンキナーゼのセンサー部分のアミノ酸配列を調べた結果、機能は未知であり、何をシグナルとして感知しているのかはこれまでに報告がないことがわかった。これにより、未知の覚醒シグナルを感知する受容体の候補が得られた。現在、これらの遺伝子をPCRで増幅し、ベクターに組み込んで大腸菌で発現させる系を構築している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ND1株の遺伝子の多くが推定遺伝子である。目的とする遺伝子であるヒスチジンキナーゼ以外にも、シグナルを感知するようなドメインや膜貫通領域を持つ遺伝子などを50ほど調べた。ヒスチジンキナーゼと相同性のあるもので絞り込み、発現量差解析でも絞り込まれた遺伝子を解析候補とした。詳しくドメイン構造を解析した結果、ヒスチジンキナーゼドメインがないものや不完全なものを除き、3個の遺伝子に絞り込んだため、予想よりも解析に時間がかかった。しかし、全体としては取りこぼしなく、可能性の高い遺伝子が絞り込まれたと考えられるので、順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
予定通り、目的タンパク質を精製して未知覚醒シグナルとの相互作用解析を行う。候補遺伝子を3つにまで絞れたため、タンパク質発現のステップの時間短縮が図れたと考えられる。ゲノム遺伝子からPCRするため、変異が入っている可能性もあるため、合成遺伝子での発現も視野に入れつつ進めていきたい。未知の覚醒画分や、予想される物質の添加などで相互作用解析を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
当初は、国際学会国内学会での発表をする予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、多くの学会がオンライン開催となったため、旅費が大幅に余った。今年度も引き続き、旅費での支出に備える一方で、現在執筆中の論文投稿が進めば、掲載料にする予定である。
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