2020 Fiscal Year Research-status Report
がんにおけるジアシルグリセロールキナーゼの機能解明とその応用
Project/Area Number |
19K05817
|
Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
甲斐 正広 札幌医科大学, 医学部, 講師 (80260777)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ジアシルグリセロールキナーゼ / メラノーマ |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はヒト悪性黒色腫(メラノーマ)におけるジアシルグリセロールキナーゼγ(DGKG)の機能について本研究で検討している。前年度までには、DGKGの不活性型ミュータント(KD, kinase-dead)あるいは常時活性化型ミュータント(CA, constitutively active)のどちらを発現してもメラノーマ細胞の遊走能や浸潤能が強く抑制されることを明らかにしていた。またマイクロアレイ解析を行い、DGKG-KDあるいはDGKG-CAを過剰発現したメラノーマ細胞では両者ともに、NFκBシグナリング経路を抑制するような方向で関連遺伝子群の発現に影響を与えていることを明らかにした。実際にNFKB1およびRelB遺伝子の発現はDGKG、特にCA型ミュータントの過剰発現によって有意に減少していることを確かめた。 そこで次にリポーターアッセイ法を用いて、実際にNFκBシグナリングにDGKGの発現が影響を与えるかどうかを検討した。リポーターベクターを導入したメラノーマ細胞に腫瘍壊死因子TNFα刺激を1時間与えてNFκBシグナリング経路を活性化させたところ、このNFκBシグナリング活性化はDGKG-CAの発現によって有意に抑制されることが示された。また野生型DGKGやDGKG-KDの発現によってもNFκBシグナリングは抑制される傾向が観察された。 さらにウェスタンブロット法を用いて、上記実験と同様にNFκBの活性化におけるDGKG発現の影響を観察した。TFNα刺激によるp65タンパク質(RelA)のリン酸化を観察したところ、リン酸化レベルがDGKG-CAの発現によって減少する傾向が示された。 以上の結果を合わせると、メラノーマではDGKGの発現によってNFκBシグナリングが抑制されることが示唆された。現在は細胞運動におけるDGKGの影響についてさらに詳細に検討している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍の到来により、何度も在宅勤務を余儀なくされたこと、さらにzoom講義に対応した講義資料の作成や、追試験者増加を見越した各種テストの問題作成業務の増加により、研究業務に割ける時間が大幅に減少したため。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き、DGKGの細胞内機能を明らかにする試みを続ける。メラノーマ細胞株にDGKGを過剰発現してやるとNFκBシグナリングが抑制されるという前年度の結果が何を意味しているのかまだわかっていない。幾つかのNFκB関連遺伝子について、その発現量やリン酸化などに着目することによって、DGKGがNFκBシグナリングにどのように関与しているかを解明したい。さらに昨年度は結局手をつけることができなかった他のDGKアイソザイムとがんの関係の解明についての研究を進めたい。具体的には(1)各臓器のがん細胞株におけるDGKアイソフォームの発現を定量RT-PCRにより解析し、(2)臨床検体におけるDGKアイソフォームの発現を定量RT-PCRおよび免疫組織化学染色により解析し、(3)The Cancer Genome Atlas (TCGA)やCOSMIC (Catalogue of Somatic Mutations in Cancer)などの公開データベースを利用して、各がん種におけるDGKアイソフォームのmRNA発現レベル、エピゲノム異常、遺伝子変異を検証する、などの調査を実施して、DGKとがんの関連の実態をつかみたい。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍における研究業務時間の大幅な減少に伴って消耗品の購入額が予定より少なくなったことが主な原因である。 新年度も本研究費はほぼ全て消耗品代として使用する予定である。研究に必要な様々な輸入品が入手できないことや価格の高騰が予想されるため、予算の使用計画は基本的には本研究申請時に申請書に記した通りであるが、旧年度からの繰り越し金を合わせることにより確実に入手できるようにしたい。
|
Research Products
(1 results)