2020 Fiscal Year Research-status Report
Study on molecular regulatory mechanisms in thermo-sensitive male sterility of rice based on cell-free translation system
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19K05822
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
戸澤 譲 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (90363267)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川岸 万紀子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 上級研究員 (50355707)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | イネ / Oryza sativa / 高温不稔 / 転写因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
イネ転写因子の機能解析 イネのMYB80ホモログおよびTDRについて,精製用のHis6タグおよびその除去に利用するTEV切断配列をアミノ末端側に導入した発現用ベクターを構築し、コムギ胚芽無細胞翻訳系による合成確認および精製を進めた。MYB80ホモログについては可溶性の全長タンパク質を得ることができ、SDS-PAGEおよびクマシーブリリアントブルー染色で95%以上の精製度を確認した。一方、大腸菌発現系で合成したMYB80ホモログは、全長タンパク質の発現は確認できず、切り縮めたDNA結合領域を不溶性タンパク質として発現、回収できたに留まった。この不溶化タンパク質を塩酸グアニジンで可溶化し、既報に従いリフォールディングを施した。精製した完全長MYB80ホモログタンパク質と大腸菌で発現、精製、リフォールディングしたMYB80ホモログのDNA結合領域部分に相当するタンパク質をそれぞれ利用して、Electrophoresis mobility shift assay (EMSA)を実施した。イネCYP703遺伝子の上流配列末端を32P標識し、試験を進めたところ、特異的結合を示す領域を確認できた。大腸菌で調製した部分タンパク質に比べ、完全長タンパク質結合による泳動シフト幅は顕著に大きいことより、完全長MYB80ホモログはホモ2量体を形成し得ることが示唆された。これまでに、CYP703上流の結合領域を140塩基領域まで狭め、合成DNAでの結合競合試験によりMYB80ホモログの結合シス配列候補の絞り込みに成功した。 共同研究者により、イネの高温不稔条件において、通常温度条件で生育させた対照区と比較して、発現量が顕著に低下していることを確認したCYP703以外の遺伝子5種が推定された。これらに対しEMSAによりMYB80ホモログの結合領域を調査したところいずれにおいても特異的結合領域を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
担当学生が新型コロナウイルスの埼玉県内蔓延の影響を受けて、通学自粛により実験の実施が実質的に困難となり、さらに、ラジオアイソトープ施設の利用に関しても通常より制限があり、今年度も計画半ばで年度が終了してしまった。その結果、CYP703タンパク質の機能解析の部分はペンディングとなっている。 当初の計画よりやや遅れている一方で、完全長の転写因子を可用性タンパク質として調製することに成功した点は、技術的に特筆すべき点であると考えている。DNA結合領域の同定のみならず、他の転写制御因子とのタンパク質相互作用解析を進める上で、重要な進捗であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、まず、高温不稔の作用点に関わる解析について、前年度に完了したMYB80ホモログとCYP703および他の5遺伝子との特異的結合実験の結果を加え、共同研究者との共著論文として投稿する。 また、未精製のMYB80を含む無細胞合成反応液をそのままの形でEMSAに使用できる系の構築を進めるために、抽出液に含まれる非特異的DNA結合タンパク質の除去条件の精査を進め、完全長転写因子の効率的なDNA結合試験の系の構築にチャレンジする。 さらに、MYB80ホモログとTDR, EAT1, bHLH142の各タンパク質との特異的なタンパク質相互作用の有無をEMSAを用いて検証するとともに、TDR, EAT1, bHLH142の各タンパク質とCYP703および他の5遺伝子とのDNA結合試験を同様に実施する。 これらの転写因子の機能解析と並行し、高温不稔に深く関わることが知られているCYP703タンパク質の酵素機能解析を進め、花粉殻の構成物の生合成に働く酵素機能を生化学的に明らかにする。具体的には初年度に調製したナノディスクの共存下でCYP703およびcytochrome P450 reductase (CPR)を無細胞翻訳系により共発現し、酵素アッセイを実施する予定である。
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Causes of Carryover |
少額であったため、端数まで使用するすることを避けた。2021年度の試薬の購入に加える予定である。
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