2020 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of yeast TRPY1 channel which convert physical stimulations into biochemical signals.
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19K05823
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浜本 晋 東京大学, 生物生産工学研究センター, 特任助教 (10533812)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | イオンチャネル / 高浸透圧 / 液胞 / 出芽酵母 |
Outline of Annual Research Achievements |
TRPチャネルは、高浸透圧、酸化還元、pH変化などの刺激に応答するセンサーの機能を有しており、TRPチャネルが関係する疾病も多く報告されている。出芽酵母液胞膜に発現する陽イオンチャネルTRPY1は、真核生物に広く保存されているTRPチャネルの原型として考えられている。TRPY1チャネルも前述の刺激によって活性化することが明らかになっており、刺激に応答して液胞内に蓄積されたCa2+を細胞質に放出している。ホスファチジルイノシトール二リン酸 {PI(3,5)P2} の合成酵素Fab1の欠損株では、TRPY1による高浸透圧応答性のCa2+の放出が観察されないことから、TRPY1の活性化にPI(3,5)P2が必要、もしくはPI(3,5)P2の前駆体であるホスファチジルイノシトール一リン酸{PI(3)P}の蓄積がTRPY1を阻害していることが推察された。電気生理学的解析方法の一つであるパッチクランプ法を用いてTRPY1の活性測定を行なったところ、PI(3)P処理によってTRPY1の活性が低下した。このことより、PI(3)Pの蓄積がTRPY1の活性を抑制することが示唆された。さらに、TRPY1チャネルの還元剤による活性化機構を明らかにするために、細胞質に露出したTRPY1のN末端領域とC末端領域のCys残基をSer残基に置換した変異チャネルを用いて還元剤による活性化の有無を確認したところ、細胞質に露出したC末端に存在するCysが還元剤による活性化に重要であることを見出した。 電気生理学的解析により、多くのTRPY1の活性制御機構が明らかになってきたが、高浸透圧ストレスによるTRPY1の活性化機構は未解明である。本研究では、高浸透圧ストレス応答におけるシグナル伝達経路の解明を行い、物理刺激である浸透圧をCa2+放出という化学シグナルに変換するTRPY1の出芽酵母における役割の解明をめざす。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
TRPY1による高浸透圧応答に関わる制御因子を同定することを目的にした網羅的な解析を行なった。Ca2+の発光検出を行うために、イクオリン遺伝子をクローニングしたプラスミドを出芽酵母の一遺伝子破壊株コレクション(約5100株)に導入してスクリーニングを行なったところ、379株において高浸透圧応答が低下した。高浸透圧応答の低下が、変異株に発現するTRPY1の液胞膜への発現量の低下に起因する可能性があるため、緑色蛍光タンパク質(mGFP)とTRPY1を連結したTRPY1:mGFPを379株に導入してTRPY1の局在解析を行なった。その結果、268株においてTRPY1の液胞膜への局在性に異常が見られた。 イクオリン遺伝子を導入した遺伝子破壊株コレクションは、TRPY1の高浸透圧応答の研究以外にも細胞膜に発現するイオン輸送体を介したCa2+の流入経路およびその下流のCa2+シグナルの伝達機構の研究ツールとしても期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、TRPY1の発現局在には影響しなかった111個の変異株に着目して研究を進める。該当する111個の遺伝子を野生株に形質転換して過剰発現株を作成し、TRPY1の高浸透圧応答活性が上昇するか検討する。高浸透圧応答活性の上昇が見られた候補遺伝子については、過剰発現株もしくは欠損株を用いて電気生理学的解析方法の一つであるパッチクランプ法によるTRPY1のシングルチャネルコンダクタンスを測定する。本解析により、候補の遺伝子産物が直接TRPY1のチャネル活性を向上させたのか高浸透圧応答においてシグナル伝達を促進したのか明らかにする。これまでに、TRPY1 のシングルチャネルコンダクタンスの測定を行い報告しているため、測定技術と経験を有することから速やかに測定して解析することが可能である。遺伝子産物が直接的にTRPY1活性を制御している場合はTRPY1の細胞質に露出しているN末端もしくはC末端領域を大腸菌を用いて発現精製を行い、タンパク質間相互作用が見られるか検討する。また、遺伝子産物がシグナル伝達経路に関わっている場合は、シグナルの受容もしくは伝達のどちらを制御しているのか出芽酵母の遺伝子変異株などを用いて検討をすすめる。
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Causes of Carryover |
2020年度に実施した遺伝子変異株を用いたTRPY1:mGFPの発現局在の解析を行う必要が生じた。そのため、2020年度に予定していた候補遺伝子の過剰発現株の作成とイクオリンアッセイをを次年度に行うため、2020年度に購入を予定していた遺伝子工学試薬を次年度に購入することとした。さらに、遺伝子破壊株を用いた電気生理学的解析を翌年度に行うために、電気生理学的実験用消耗品と酵母培養用培地を翌年度に購入する。 (使用計画)電気生理学的実験によるイオンチャネル活性の測定を予定しているため、ガラス器具、プラスチック器具、電子部品を消耗品として購入する。電気生理実験に用いる巨大化酵母の調製などに必要となる培地試薬、化学薬品、酵素試薬などの消耗品を購入する。遺伝子破壊株の作成、遺伝子発現量の確認のため の遺伝子工学試薬を購入する。成果発表となる国際誌への論文投稿をめざし、英文校正代と投稿料を必要とする。国内の学会と国外の学会に積極的に参加し、本 研究の成果を発表するために出張経費が必要となる。
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Research Products
(2 results)