2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K05829
|
Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
安田 佳織 富山県立大学, 工学部, 講師 (70707231)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ビタミンD / 代謝 / 診断 |
Outline of Annual Research Achievements |
ビタミンD3は、25-ヒドロキシビタミンD3(25D3)を経て、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3(1,25D3)へと代謝された後、種々の生理作用を発揮する。CYP24A1は25D3や1,25D3を連続的に代謝する酵素であり、CYP24A1の機能不全は1,25D3を不活性化できず、特発性乳児高カルシウム血症や腎結石を引き起こす。 これまで、生体内におけるCYP24A1依存性および非依存性のビタミンD代謝を明らかにする目的でCYP24A1遺伝子欠損(KO)ラットを作出し、ラット体内でのCYP24A1代謝を明らかにしてきた。本年度は、25D3投与の影響を調べた。CYP24A1 KOラットは正常な表現型を示したが、25D3を100 μg/kg-体重/日のレベルで連日投与することで、異所性石灰化や腎臓のカルシウム沈着が起こるとともに、著しい体重減少が認められた。一方、野生型ラットに同量の25D3を投与した場合にはこれらの症状はみられなかった。25D3投与4週間後の各ラットの血中25D3および1,25D3濃度を定量したところ、血中1,25D3濃度は両者同程度であったのに対し、血中25D3濃度はCYP24A1 KOラットで野生型の5倍以上高値を示した。野生型ラットでは25D3投与によってCYP24A1依存性代謝物である24R,25D3や24-oxo-25D3が顕著に増加したが、CYP24A1 KOラットでは全く検出されなかった。CYP24A1欠損によって血中25D3濃度が顕著に上昇し、副作用を示したと考えられる。 今回の結果から、CYP24A1機能不全の人がビタミンD3や25D3を摂取する場合、注意が必要であり、事前に24R,25D3などCYP24A1依存的代謝物定量などによる診断が重要になると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述した通り、本年度は、CYP24A1KOラットに対する25D3投与の影響を明らかにした。CYP24 KOラットでは野生型と異なり、25D3投与による副作用を引き起こしやすいことがわかった。ヒトのCYP24A1機能不全の人がビタミンDサプリメントを摂取した際の副作用が再現できたと考えられる。1年目で明らかにした代謝解析結果と併せ、ビタミンDを積極的に摂取する上でCYP24A1の機能不全の事前診断が重要であること、また、その際、血中代謝物を利用した診断が可能であることを示すことができた。次年度さらに研究を展開していくことで、当初の目的であったビタミンDが関与する疾患の診断・予防に関する情報が多く得られると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、これまでの結果を踏まえ、より詳細な生体内ビタミンD代謝物の解析を行う。2年目までは、血液中の代謝物定量を中心に研究を進めてきた。次のステップでは、非侵襲的に採取可能な尿における25D3の各代謝物の詳細を調べる。尿では、抱合体など全く異なる代謝物が検出される可能性が高い。尿中のビタミンD濃度を知ることで、より簡便にビタミンD不足や過剰を知ることができる。ビタミンDの積極的摂取は、くる病予防だけではなく生活習慣病など種々の疾患予防として有用である可能性が高く、今回の研究をさらに進めることで、ビタミンDが関与する疾患の診断や安全な予防に貢献したい。
|
Causes of Carryover |
2年目前半のin vitroで興味深い結果が得られたため、2年目後半行う予定であった動物の組織学的解析の時期をずらし、先にvitroでの実験に焦点を当てた。現在投与中の生体に対して、3年目に詳細な組織学的解析を行う。また、尿を含めた詳細な代謝解析を行う。
|
Research Products
(11 results)