2023 Fiscal Year Annual Research Report
シロイヌナズナの花粉および気孔発生時の色素体増殖・分配ダイナミクス
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19K05831
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
藤原 誠 上智大学, 理工学部, 教授 (90332345)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 竜一 琉球大学, 理学部, 准教授 (50322681)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 色素体 / シロイヌナズナ / 葉緑体分裂 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、モデル植物シロイヌナズナを用いて、未だ理解が十分ではない細胞分裂時の色素体増殖・分配に関する知見を得ることを目的とする。 本年度は、気孔幹細胞であるメリステモイドの増殖時の葉緑体分配に着目した。メリステモイドは非対称分裂によって小型のメリステモイド自身と大型の娘細胞を生む。シロイヌナズナではシュート表皮に不等型気孔が形成されるが、その過程ではメリステモイドは分化後3回分裂して1つの孔辺母細胞とそれを囲む3つの表皮細胞を形成する。 昨年度の解析により、核コードFtsZ遺伝子が完全にノックアウトされたftsZ変異体では、孔辺母細胞の時点で葉緑体を欠失した細胞が低頻度生じることが明らかになった。またそれと並行して、FtsZリング形成不全を示すarc12変異体では葉緑体欠失が従来知られていた孔辺細胞のみならず表皮細胞でも起こっていることが新規に観察された。そこで、ftsZ変異体の不等型気孔複合体を対象として各細胞の葉緑体欠失を評価した。その結果、(1)孔辺細胞と表皮細胞の両方で葉緑体を欠失、(2)表皮細胞でのみ葉緑体を欠失、(3)孔辺細胞のみで葉緑体を欠失の3つのパターンが認められた。さらに、CaMV35SプロモーターによりストロマをYFP蛍光標識したftsZ変異体を観察したところ、葉緑体を欠失した細胞には基本的に非光合成色素体が存在することが示された。これらの結果より、重篤な葉緑体分裂阻害が起こると、メリステモイドの増殖時に両娘細胞のそれぞれに葉緑体欠失が起こる可能性があること、また葉緑体が受け継がれなくても最低1個の色素体は娘細胞に分配されることが示された。 一方、研究計画で記載した花粉母細胞の原色素体の電子顕微鏡解析については、昨年度報告したparc6変異体以外で良好な観察像は得られなかった。
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