2020 Fiscal Year Research-status Report
時計タンパク質KaiCにおける温度補償性の分子機構
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19K05833
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
寺内 一姫 立命館大学, 生命科学部, 教授 (70444370)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 概日時計 / シアノバクテリア |
Outline of Annual Research Achievements |
概日時計の温度補償性は、温度が変化しても周期長がほとんど変化しない、すなわち、振動の速度が温度に対して一定に保持されることである。シアノバクテリアでは3つの時計タンパク質KaiA、KaiB、KaiCにより in vitroにおいてATP存在下で約24時間の概日振動を再構成可能である。概日時計の24時間の周期長が中心振動体であるKaiCのATPase活性によって決定されており、このATPase活性に温度補償性が認められることが知られている。本研究では、この分子機構を明らかにすることを目的としている。 昨年度改良したHPLCを用いたATPase活性の測定法で、KaiCのATP加水分解量を解析した。30℃において KaiC の ATPase 活性は ADP 生成速度として、14 day-1 と報告されている。この既報のデータと比較し、その活性kcatは同等の値を得たが、KaiCのタンパク質精製条件や反応条件により、Km値に違いがあることが新たに確認された。ATPase活性の阻害様式を精査したところ、Lineweaver-Burkプロットは完全に直線にならず、非 Michaelis-Menten 型の反応を示唆する曲線が得られた。 これらの結果から、KaiC の CI ドメインと CII ドメインがそれぞれ異なる酵素学的パラメーターをもつ ATPaseであることが示唆された。KaiCの2つのドメインの相互作用が周期の温度補償性をもたらすといわれており、この点と併せて温度補償性について考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年(2020年)度は新型コロナ感染拡大の影響により実験ができない期間が生じ、年度前半は予定よりも遅れを生じたが、年度後半に実験に注力した。新たに得られたデータを既存の仮説に照らし合わせ、残り期間において目的が概ね達成されると見込まれるため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、当初計画に沿った研究を継続するとともに、得られた結果を踏まえた以下の研究を追加する予定である。令和2年度にKaiC の CI ドメインと CII ドメインがそれぞれ異なる酵素学的パラメーターをもつ ATPaseであることが示唆されたため、KaiCの変異型タンパク質を利用することでこの点を検証する。これら結果を踏まえて、KaiCのATPaseにおいて温度補償性が成立している分子機構を考察する。
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Causes of Carryover |
令和2年度においては、新型コロナ感染対策の影響により学会参加のために必要な旅費が不要であった。さらに、所属機関において研究支援費が得られ、研究補助者の人件費に充てることができたため、次年度使用額が生じた。 令和3年度は、試薬や培地、プラスチック器具などの消耗品の購入、成果発表のための旅費、研究補助者の人件費に充てる計画である。
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Research Products
(5 results)