2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K05834
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
大沼 貴之 近畿大学, 農学部, 准教授 (60446482)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | キシラナーゼ阻害タンパク質 / キチナーゼ / ヘミセルロース分解 / イネ / 植物ー微生物間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
イネのXIP(Xylanase Inhibitor Protein)である、OsXIP、riceXIPおよびRIXIの組換え型タンパク質を生産し、OsXIPとriceXIPについては精製後、結晶化およびキシラナーゼ阻害活性評価を行った。RIXIについては発現は確認されたものの、アフィニティクロマトグラフィーによる精製ができなかったことから、発現ベクターの再構築を行った。OsXIPとriceXIPについては幾つかの条件下で結晶を得たことから、X線による回折実験を開始したが、現時点までに構造決定に至っていない。 riceXIPによるイネ立枯れ病菌の生産する糖質加水分解酵素ファミリーGH10およびGH11に分類されるキシラナーゼに対する阻害活性評価を行ったところ、OsXIPとは異なり、両キシラナーゼの活性を阻害するデュアルキシラナーゼインヒビタータンパク質であることがわかった。また、両キシラナーゼに対する半数阻害濃度IC50値および阻害定数Ki値を決定した。Dixon plotによる阻害様式の解析の結果、OsXIPおよびriceXIPは各キシラナーゼの競争阻害タンパク質であることがわかった。 各XIPタンパク質と立枯れ病菌キシラナーゼの相互作用解析を目的として、ゲルろ過クロマトグラフィーを用いて複合体形成について調べた。その結果OsXIPはGH11キシラナーゼのみと複合体を形成し、riceXIPは両キシラナーゼとそれぞれ複合体を形成することがわかった。この結果は、阻害活性評価の結果を支持するものと考えられた。さらに、riceXIPはGH10と11キシラナーゼと混合した際、三者複合体を形成することがわかった。このことからriceXIPは両キシラナーゼと分子上の異なる部位で結合し、両酵素の活性を同時に阻害する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
OsXIPとriceXIPの阻害タンパク質としての特異性や、半数阻害濃度IC50値および阻害定数Ki値で表される阻害活性の強さを順調に調べることができた。ゲルろ過クロマトグラフィーを用いたXIPとキシラナーゼの結合解析では、阻害活性評価の結果を支持する結果が得られ、各タンパク質の相互作用を異なる実験手法を用いて証明することができた。 OsXIPとriceXIPの立体構造については、複数の条件下で結晶が得られたことから、比較的容易に構造決定に至るものと考えられた。しかし、もっともアミノ酸配列の相動性が高いコムギXIP-I(PDB code 1OM0)をサーチモデルに用いた分子置換法では、それぞれの構造を決定することができなかった。原因として、どの結晶も双晶であったことが考えられた。現在結晶化条件を増やした再スクリーニングを行っている。また、セレノメチオニンでラベル化した各タンパク質の発現、精製を行っており、精製タンパク質が得られた後、結晶化及びSAD(短波長異常分散)法による位相の決定を行うことを計画している。 RIXIについては、組換えタンパク質の発現は確認されたものの、Ni-NTAカラムによる精製ができなかったことから、ヒスチジンタグをN末端側ではなくC末端側に付加する様変更した発現ベクターの再構築が必要であった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題はおおむね順調に進展していることから、本年度は計画通りITC(等温滴定型熱量計)を用いた各XIPとキシラナーゼとの結合実験と、複合体の結晶化および構造決定を行う。両実験は、それぞれの精製タンパク質を多量に要することから、特に年度前半にはタンパク質の発現および精製を重点的に行うことを計画している。また、OsXIPとriceXIPの結晶化における双晶の解消と、複合体の結晶化を目的とすることから、多くの結晶化条件のスクリーニングが必要となる。そのため研究の効率化のため、結晶化ロボット(Mosquito)の使用と、高エネルギー加速器研究機構とSpring-8での結晶の自動測定の活用による、ハイスループットな結晶化および構造解析実験系を構築することを計画している。
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Causes of Carryover |
OsXIPおよびriceXIPの結晶が複数条件下で比較的容易に得られたことから、タンパク質精製用カラムおよび結晶化試薬等消耗品の消費が予定より少なく済んだ。しかし次年度は結晶化スクリーニングがより本格化することから、それらの実験に対する消耗品に対する支出が多くなることが予想される。 新型コロナウィルス感染拡大防止の措置として発表を予定していた学会が中止になったため、旅費の支出がなくなった。 次年度についてはタンパク質の発現および精製に注力するため、研究協力者(アルバイト)の採用を計画している。少なくとも前年度未使用額と同額相当の予算をその人件費に充てることを計画している。
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Research Products
(1 results)