2019 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of mechanisms of insecticidal actions of two-domain scorpion peptides
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19K05842
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮下 正弘 京都大学, 農学研究科, 准教授 (80324664)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 細胞膜透過 / ペプチド合成 / 昆虫細胞 / サソリ毒 |
Outline of Annual Research Achievements |
サソリ毒液には、活性成分としてジスルフィド結合で架橋されたペプチドと、ジスルフィド結合をもたずにαヘリックス構造を形成するペプチドが存在する。これらに加えて、その両者の構造的特徴をもつ「2ドメイン型」ペプチドも存在する。ヤエヤマサソリより同定した殺虫性ペプチドLaIT2は、この2ドメイン型構造をもつが、合成類縁体を用いた実験により、αヘリックス構造を形成するN末端ドメインが殺虫活性発現に必須であることが分かっている。一方、C末端ドメインについては、単独では活性を示さないものの、N末端ドメインとの組み合わせによって活性を増強させる効果をもつ。したがって、LaIT2のC末端ドメインの作用部位が昆虫細胞内に存在し、その移行のためにN末端ドメインが必要であるという仮説が考えられた。そこで今回、N末端ドメインペプチドの細胞膜透過能について調べた。まず、LaIT2のN末端ドメイン(1~30残基目)に、さらにそのC末端に蛍光標識導入のためのCys残基を追加したペプチド(N-LaIT2)を合成した。蛍光標識は、N-LaIT2のCys残基に対して、マレイミド基を介してfluoresceinを導入することでおこなった。昆虫細胞(Sf-9)に対してN-LaIT2を処理した後、共焦点顕微鏡を用いてその局在を調べた。その結果、透過効率はやや低いながらもN-LaIT2の細胞内への移行が見られた。さらに、他の親水性の分子を細胞内移送させる能力について、分子量10kDaのdextranと共処理することによって調べたところ、顕著な移送が認められた。これらのことから、LaIT2のN末端ドメインには細胞膜透過能があり、これによってC末端ドメインを作用部位に移行させていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
LaIT2のN末端ドメインは、その構造および構成アミノ酸の種類から細胞膜透過能を持つことが予想されていた。今回の研究によりそのことが実証されたが、これは2ドメイン型ペプチドのもつ構造の意義について新たな知見をもたらすものであり、本研究課題の進展にとって重要な発見である。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の研究によって、LaIT2のN末端ドメインには細胞膜透過作用があることが判明した。研究代表者は最近、ヤエヤマサソリ毒液より殺虫性ペプチドとしてLaIT3を見いだし、その構造決定に成功しているが、これもLaIT2と同様の構造をもつことが明らかとなっている。そこで、LaIT3についてもLaIT2と同様にN末端およびC末端ドメインのみをもつペプチドを合成し、それぞれのドメインの殺虫活性に対する寄与を明らかにするとともに、N末端ドメインペプチドの細胞膜透過能について調べる予定である。
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Research Products
(3 results)