2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K05856
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Research Institution | Suntory Foundation for Life Sciences |
Principal Investigator |
村田 純 公益財団法人サントリー生命科学財団, 生物有機科学研究所・統合生体分子機能研究部, 主席研究員 (90500794)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 植物生長 / 根圏環境適応 |
Outline of Annual Research Achievements |
土壌には、病原菌や植物生長を促すいわゆるPlant Growth Promoting Rhizobacteria(PGPR)等、植物生長に様々な影響を与える多様な土壌微生物が存在する。近年、植物が特定の病原菌、根粒菌やAM糸状菌を感知し応答する分子機構が解明されてきた。しかしそのほとんどが土壌微生物とその作用を受ける植物の1対1の関係にのみ着目しており、土壌微生物の影響を受けた植物と隣接する植物との間に何らかの植物間相互作用があるのか殆ど解明されていない。
我々は枯草菌-シロイヌナズナin vitro共培養系において、複数個体配したシロイヌナズナの生長が、枯草菌により生長抑制を受けること、さらにシロイヌナズナは根分泌物を介した個体間相互作用により生長抑制度合いを低減していることを見出した。2019年度では、根分泌物中にあると予想される「植物生長低減抑制活性」の精製と同定に向け、主根伸長を指標に、活性を検出するバイオアッセイ系を構築した。寒天培地粗抽出液を同実験系に供した結果、その脂溶性画分に当該活性を認めた。続いて、寒天培地粗抽出液をさらにODSカラムを用いた逆相クロマトグラフィにて分離し、得られた画分をバイオアッセイに供した結果、複数の活性画分を得た。
一方、上記活性分画の進捗状況から、根分泌物中の活性本体は低分子化合物であることが予想された。そこで、結果が出るまで数週間かかるバイオアッセイの時間を短縮する目的で、バイオアッセイ開始後早い段階で活性の代用指標となるマーカー化合物候補を、LC-Orbitrap-MSによる根分泌物の一斉分析を実施した。その結果、枯草菌と共培養時に、非共培養時と比較して蓄積量が変動する化合物群を検出し、そのなかからマーカー化合物候補数種を絞り込んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初当該年度に予定していた、バイオアッセイ系の確立と活性精製の開始を終えることが出来たこと、また抽出液中の低分子化合物一斉分析系を立ち上げ、精製・同定を試みている、「植物生長抑制低減活性」のマーカー化合物候補の絞込みを終えたため。
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Strategy for Future Research Activity |
活性の精製・同定では、イオン交換カラムなどさらに数種類のカラムを用いて分離精製・バイオアッセイを進め、活性の同定を試みる。
活性のマーカー化合物を使用し、バイオアッセイをスピード化することで、コロナウィルス感染拡大の影響による今後の実験計画の遅れを部分的に挽回できると考えている。
化合物の一斉分析では、現段階では必ずしも化合物の同定率が十分高くないため、検出した化合物のうち実体が明らかでないものが多い。そのため含窒素化合物については15N標識硝酸を用いて植物を栽培し、根分泌物中の含窒素化合物を標識することで、質量分析による一斉分析での化合物同定率の向上を図る。
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