2020 Fiscal Year Research-status Report
加熱調理大根に含まれるβ-グルクロニダーゼ阻害物質の同定とその生成機構の解明
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19K05861
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
橋本 啓 宇都宮大学, 農学部, 教授 (10237935)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | β-グルクロニダーゼ / 大根 |
Outline of Annual Research Achievements |
腸内細菌の産生するβ-グルクロニダーゼ (β-GUD) の活性を阻害することにより、大腸がんのリスクが低下するものと期待されている。そこで、各種野菜抽出物のβ-GUD阻害活性を調べたところ、大根は加熱処理することによりβ-GUD阻害活性を示すようになることを見出した。本研究の目的は、大根の加熱処理により活性化したβ-GUD阻害物質を単離同定し、活性物質の生成条件や活性化の機構を明らかにすることにある。今年度は、加熱処理大根の70%メタノール抽出物に含まれるβ-GUD阻害物質を明らかにすべく、HPLC分画物についてβ-GUD阻害活性を検討した。その結果、粗分画物では複数の画分にβ-GUD阻害活性が認められたが、いずれの画分もさらに精製を進めるに伴いその活性が低下してしまった。そこで複数のピークの組み合わせによるβ-GUD阻害活性を検討したが、組み合わせの重要性を示唆する結果は得られたものの、再現性の良い結果を得ることができなかった。活性成分を構成すると考えられるピークはその吸光スペクトルなどからフェノール酸類が含まれていることが示唆されたので、シナピン酸をモデルとして加熱処理がβ-GUD阻害活性に及ぼす影響を検討した。シナピン酸のβ-GUD阻害活性は20%程度と弱い阻害活性であったが、100℃、15分間の加熱処理により、70%程度の高い活性を示すことが確認できた。また、HPLCによる分画では、主要なピークを元に3つの画分が得られたが、各画分単独では阻害活性は弱いが、複数の画分を組合せるとより高い活性が得られた。しかし、活性物質の単離には至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、加熱大根抽出物と加熱処理シナピン酸のについてHPLCによる活性物質の精製を進めたが、活性物質の単離に至らなかった。複数の成分が活性に関与していることが示唆されているが、一部の成分が不安定なためと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、HPLCの分取において、加熱処理により出現するピークと、加熱処理前から存在しているピークを適宜組み合わせ、阻害活性に及ぼす影響を検討することで鍵となる構造を明らかにしていくことが一つの手段であると考えている。また、シナピン酸を用いたモデル実験でも同様の結果が得られたので、まずはこのシナピン酸モデルの検討を進め、得られた情報をもとに大根における加熱の影響を明らかにしていく予定である。
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Causes of Carryover |
β-グルクロニダーゼ阻害物質を単離し、その構造解析まで進める予定であったが、単離精製された物質の組み合わせによる阻害活性にまで検討が進まなかったため、今年度中に構造解析の実験を行うことができず、次年度使用額が生じてしまった。今後は、シナピン酸モデルを含め検討範囲を広げたのでそれらの試験に使用する計画である。
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